丸神の滝 下段(50m) |
滝それぞれには訪問の旬があるように思う。私は水量の多い豪快な滝が
好きであるのだが、冬になると、このような滝は寒々しく感じられててか訪れる気がしなくなる。代わって、丸神の滝がそうであ
るように林間に淡々と流れる滝を訪問したくなる。木々の葉の落ちた林中に差し込む太陽に暖まりながら、沸かしたコーヒーを
飲みながら見る滝も、この時期の訪問の楽しみである。
埼玉県は平野のイメージの強いが、秩父地域の山々は深い。この一帯の中心となっている秩父市には、鉄道が東京から 通じているからこともあって、訪れた経験をもつ人は多いだろう。しかし、その周辺に分布している数多くの町や村については、 知らない人も多いと思う。 私は、東上線の沿線に住んでいたこともあって、秩父はよく訪れていたから、知識は充分にある ものと思っていたのだが、丸神の滝に出かけようと決めても、この滝のあるという両神村の位置が今ひとつわからないのである。 両神村へは、村営バスが小鹿野役場前と三峰口の2か所から出ていることがわかったから、まず小鹿野(おがの)町 へ行くことにした。西武秩父駅のバス乗場からバスが出ていた。秩父鉄道の踏み切りを渡ったバスは、小鹿野からさらに県境 を越えて群馬県まで続いている国道299号線に出た。 秩父鉄道の秩父駅に立ち寄って、再び299号を進み、荒川を渡り川岸を登る。ここには赤坂という小さな峠がある。 少し高い場所に出て、前方に小鹿野の町が見渡せた。山里ではなく大きな町である。 バスは町の中心に向かう左側の道に入る。警察、郵便局と公共施設が現れると、下車する役場前のバス停であった。役場 の脇に観光案内所があり、真新しい待ち合い室が設けられていた。ここで白井差(しろいさす)行きの村営バスを待つことになった。 荒川の一支流、小森川の最上流の集落が白井差で、両神山の登山口になっている。村営バスは小鹿野の街沿いに走っ てから、左折し、小森川に沿って両神村の中心に向かっていった。村役場前を過ぎ、温泉施設、薬師の湯を越えたあたりからは、 山間集落の趣が強くなってきた。バスがかろうじて通れるような細い道路を走るようになると、となりを流れる川の川底も近くなり、 いよいよ源流に近づいてきた感じである。目的地、丸神の滝入口バス停に着くまで、小鹿野役場前から35分ほどであった。 川の対岸の杉林中に歩道はつけられている。橋を渡り、急な坂を登っていく。15分で滝が展望できる東屋に着いた。上中下 3段からなる丸神の滝は東屋のちょうど南に位置している。最上段はここからは見えない。荷物を置いて、まずは滝の下まで下ってみる。 歩道を進むと、すぐに12mの高さの上段が見えてくる。急な下りを降りていくと、滝の直下に出る。 ふたたび東屋に戻り、コーヒーを沸かしてから、昼食を食べた。帰りのバスまでは、まだかなり時間が残っているから、寝ころがって 本を読むことにした。日が滝の後ろに隠れてしまうと急に寒くなった。12月末のこの日は、他に訪問者はいない。山影から再び日が出たころ、 先ほど降りた道をふたたび下って、滝の下に出た。帰路は、丸神の滝のある滝越沢沿いに村営キャンプ場に出る道を下った。こちらの道は緩 やかで10分で終わる。キャンプ場から橋を渡れば、滝前という名の停留所があって、ここで帰りのバスを待つことになった。 |
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