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第一日 |
甲斐駒ケ岳の登山路、仙水峠に発する北沢が、
野呂川本流に流れ込んでいるのが野呂川出合で、南アルプス林道がこの流れを北沢橋でわたるとバス停がある.満員の北沢峠行きのバスで、降りるのは私ひとりだけで
あった.
バス停の手前から、野呂川左岸につけられている野呂川林道が始まる.両俣小屋は海抜で2000メートル、ここから200メートル強登れば今日の行程は終わりとなる.
車を通す道路だけに勾配は緩やかであるが、野呂川に流れ込む沢に遭遇するたびに、下りぎみになっては登りなおすことが繰り返される.
最初に現れるのは小仙丈沢、続いて大仙丈沢と、仙丈岳東面に発する2つの大きな沢を越える.橋すぐ横が滝となっているのは奥仙丈沢で、これを越えて野呂川の流れの
ところまで戻ると、谷筋の先に甲斐駒の姿が見えていた.
その先、対岸に見えてくる広い河原は、北岳肩の小屋に発し北西に流れ下ってくる前白根沢のものであろう.もう両俣小屋も近くなったように期待したが、ここから先、まだ意
外と長い林道歩きが残っていた.林道を離れる場所に出て、河原側へ下りていくと、平坦な河床を進む道になってまもなく小屋に着いた. |
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小仙丈沢. |
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大仙丈沢. |
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第二日 |
小屋のすぐ上流で対岸に渡る.左俣に入ると、左俣大滝まで渡渉の続く沢の道である.
赤ペンキの印を見落とさないように渡渉を繰り返す.夏には、渡渉を必要としないほど水量が減るようであるが、台風後の今日は、いずれも膝に達するほどの深みがあった.初秋、早朝の沢は冷たい.できるだけ水に触れ
ないように、最初の3つの渡渉点は石を飛んで切り抜けた.次の渡渉点は、川幅もあって適当な石も見当たらなかったから、靴を脱いでわたらざるをえない.
わずかな時間だけど、沢水は感覚が麻痺しそうなくらい冷たく感じた.
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渡渉を繰り返し、左俣を辿る. |
この先で、右岸から左岸を経て右岸と、連続する渡渉点が現れた後、右岸で小さな尾根を越える.再び2つの渡渉点を過ぎ、梯子を上ると
前に細い流れの滝が見えてきた. |
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左:正面にある滝.右:左俣大滝 |
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小屋を出発してから1時間ほど経過している.順調に進んでいれば、そろそろ大滝のはずだ.前方に見えてきた滝は水量が少なく、思い浮かべていた大滝との差にがっかりしながら、
近づいていくと、これは大滝ではなかった.肝心の大滝は左の岩の陰に隠れていたのである.ここから、尾根を這い上がる急坂が始まる.これから始まる長い登りに備え、まずは水を補
充し、大滝を見ながらゆっくり休息していくことにした.
沢底から稜線まで這い登らなければならないから急勾配の登りが続く.40分ほど登り、対岸が見えてきたところで、まだ先は長いことから、休憩していくことにした.前の樹間に見えてい
るのは中白峰から連なる、佐俣と右俣を分けている尾根のようだ.
休息を終え、出発するとまもなく尾根の上に出て展望があった.まわりの木々はカンバに変わってきた.進むとカンバの背もいつしか低くなって、ハイマツ中の登りとなった.
いよいよ稜線も近いようだ.展望が開け、中白峰の右手には塩見岳も見えるようになった.時計を見れば、さきほどの休憩から早くも35分が過ぎていた.展望もよいので、このあたりで
休息することにした.
続く20分ほどの登りの後、稜線に出た.野呂川側の展望が開け、仙丈ケ岳も甲斐駒も見える.これから登っていく北岳の山頂もいよいよはっきりしてきた.
ここから見える、北岳山頂は、南からみるあの威厳あるピークの姿はない.台形の上にそれらしき標識が立っているのがかろうじて見えていて、山頂と思われる場所が特定できるに過ぎ
ない.
20分ほど稜線を登ると、標識の立つ分岐に着いた.ここで肩の小屋から登ってくる登山道に合流した.山頂のすぐ手前にひとつピークがあり、それを越えると山頂に着いた.
国内第二位の高所、今日は第一位の富士の姿も見えていた.
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中白峰.尾根の背後には、三峰岳と仙塩尾根、その後ろには、塩見岳のピークが見えている. |
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甲斐駒. |
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中白峰の背後に隠れていた間ノ岳も見えている. |
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分岐 |
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三角点. |
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山頂、海抜3193メートル. |
略図 |
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