瑞牆山 頂上附近の岩塔は特異的で、一目でここが目指す場所であることがわかる. |
私は、もうだいぶ以前にこの山の写真をガイドブックで見て以来、奥秩父の西の外れに存在する奇妙な山に取り付かれ、
実物を早く見てみたいと思いつづけてきた.「針葉樹の大森林からまるでニョキニョキと岩が生えているような」と
深田久弥が紹介しているこの山の姿が頭を離れないのである. 何しろ、韮崎の北の方にある増富温泉という温泉から車道を登っていかなければならないとのことだから、日帰りとい うわけにもいかず、手出しせずに残してあった.だからといって泊まりがけでいくというほどのところでもないから、今回は 友人と車で出かけることにした. 名前だけはずっと前から知っていた増富温泉という小さな温泉街を通りすぎ、細い車道を登っていくと、 例のニョキニョキだと一目でわかる岩峰が見えてきた. 登る先が見えているのだからどんどん期待が高まる. もう一刻も早く登りたいのであるが、金山峠についたらまずは腹ごしらえをすることにした.気は急かれるだけでなく、11月の朝は寒い. 車の陰で朝食を作り早々に食べてからスタートした. 瑞牆山荘の前から、斜面を登っていくと、林道に出る.この林道を経由しても富士見小屋にいくことができるようであったが、 登山道の方をそのまま進む.水場を過ぎると富士見小屋の前に出る.登山道はここで大日岩から金峰山に向かうコースが分かれていく. 瑞牆山へは小屋裏側に回るように尾根を越えて、天鳥川に向けて下っていく. 急な下りを降りると、沢を渡ってのぼりに入った.等高線の入りこんだ場所に沿って、がんがん登っ ていく感じで、1時間弱で岩峰の下に出た.鑢岩というのがこれであろうか、岩が突っ立ている. ここで、早くも頂上に来たものと思っていたら、実際には最後の岩峰は裏側から登っていくようになっていて、少しだけ 広い岩の上に出た.見えていた岩峰の中のどれかの上に今立っているのだろう. 岩の隅まで行き、おそるおそる下を除けば思った通り、垂直に切り落ちていた.すぐ南側には金峰山が対峙している. 西側を見下ろすと、先ほど見上げていた鑢岩の上面も見えていた.それにしても、まわり一面に広がる森林は何と見 事なことだろう.秩父の奥深さを感じた山行であった. |
鑢岩を見上げる |
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頂上から岩塔群を見下ろす |
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富士見平小屋 |
尾崎喜八「山の絵本」収録の「花崗岩のイマージュ」、
「朝日を受けた薄い珊瑚いろの花崗岩の岩峰に針葉樹の木賊色のかたまりをこまかくちりばめて青空を刻んでいる」
は私のこの山の印象を固定してしまった.増富山岳会なる組織に属する、長一なるにわかガイドを引き連れて登っていく話は、
都会に住む詩人の求めた風景と、そこにすむ地元の人の現実的な姿がうまく出ていて、私の記憶にくすぶり続けている光景で
ある.
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金峰山 |
八ケ岳
天狗山 |
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