相模川は津久井湖の上で、道志川という支流を分けている.この道志の深谷と相模川ではさまれた山々を道志山塊とよんでいるようだ.
最高峰、御正体山1683メートルは、すぐ隣の丹沢山塊を含めてもこのあたり一の標高を持つ.山頂は展望が望めなく訪問者も限られているから、ブナの自然林に囲まれた 幽玄なまでに鬱蒼とした林中の静かな山旅を楽しむことができた. |
6月の土曜日、友人と日帰りで山に出かけることにした.奥多摩あたりの山は、すでに登り尽くし、その周辺でも日帰りで登るとなると魅力的な山は意外と少ない.
前々から気にかかっていた御正体山がふと思い浮かぶ.丹沢山塊の北辺弧釣山のさらに北西に位置する山で、まず名前が奇妙で気にかかっていた.
それと奥多摩あたりの山から南を眺めたとき、丹沢あたりの高いピークの中の一つがこの山であるようなので気にかかっていたのである.
ガイドブックによれば、頂上の見晴らしはなし、ブナを中心とした広葉樹林の山であると書かれているのであるが、その点は、今回この山を選んだ理由ともなった. 梅雨どき週末もまず雨であろうことは予想できたから、展望は最初から外して考えたほうが良いのである.そして、この際、展望のない山に登っておこうという気を起こさせた のである.その上、ブナの森の幽玄さは雨中の方が期待できるのである.しかもブナの葉はこの時期新緑で美しいだろう.この山は不運にも雨の日のための山に仕立てられて しまった. 登路は南側の山伏峠からにした.アプローチに使うバスは、富士吉田駅発、山中湖畔平野経由で山伏峠を越え道志に向かうものがあるのであるが、調べてみると一日 たった二便しかない.しかも早朝のものは7時25分に吉田駅を出てしまうから、東京からでは間に合いそうにない.よって平野から山伏峠までは車道を歩かざるをえない. 梅雨が明けて夏本番にならないと山中湖観光もないのだろう、土曜日とはいえ平野行きの乗客は少なかった.それでも新緑の季節だから、同じ目的をもっている 登山者がいてもいいと思っていたが、それもなかった.雨が降り出しそうな曇り空とは言え、東京にも近いこの山に、この日いったい何人が登ったのだろうか.不思議なほど寂れ ていた. バスを降り、歩き始めて30分、車道はいくらか傾斜を増してきて、峠に近づいたことがわかる.右にゆるく折れるとトンネルの前に出た. ここでまず朝食を食べながら休憩した.右手奥にある、古い建物がガイドブックに書いてあるホテルの跡であるのだろうか.入口を封鎖した旧トンネルの前を 過ぎた先に峠への登り口があった.すぐ上が峠で、最初から新緑の自然林が続き快適な登りが始まる. |
山頂 | 一等三角点 | |
ここの細い尾根の線が、由一丹沢山塊とこの山をつないでいる.
つながっているのだから、ここも丹沢の山といってもよさそうに私には思えるのだが、分けているのはそれなりに理由があるのであろうか.
道志側は植林になって開けている場所の周囲をまわるようにやや急な道を登っていくと分岐に出る. その先は林は切り開かれ、送電用の巨大な鉄塔が建っていた. |
再び林中に入ると、いよいよブナの巨木が現れ始めた.いったん下って、
のぼり直した展望のないピークを越えると、札がかかっていて、初めてここが、中岳のピークであることがわかった.地形図では1411メートルと記載されている.
いったん下り、上りなおしたところが1471メートルの前岳、わずかに下って登りに転ずると山頂に向けた急坂が続いた. 淡々と広葉樹林の中の急なのぼりを前進していく.登りが終わって、大樹の並ぶ林中を進んでいくと銅屋根の小さな祠がおかれていた. もうそろそろ山頂ではと予想したが、その通りで、木立の中に少しだけ切開かれている広場に出る.ここにも、小さな祠がおかれ、白井平からや、細野から道が登ってきている. 祠の隣に三角点の標石がある.1681,6メートルで、一等三角点である. 帰路は細野への道を下る.こちらはよりいっそう急な坂が続く.峰神社は小さな祠があるのみで、その先で、地形図には載っていない鹿留(ししどめ)へ下る道が 分かれていた.神社の場所から西にむかって尾根が延びているから、これに沿って下っていくのであろう. まだまだ急な坂は続いた.それもミズナラの巨木が現れたところで終わる. 犬の鳴き声、物音も聴こえてきて里に近づいたことがわかる.カラマツ林に突き当たり、左に道が折れると、アカマツの林の中を緩い下りが続いている.続いて植林の中に出た.いつもなら耐えられない植林の中の道も、今日は十分自然林を 遊んだからであろうか、整然と立つ木々の間の路はいつもとは反対にかえって新鮮に思われ、樹高も高く、枝打ちされて風の通りがいいからか、蒸し暑さから開放されたようなさわや かな感じさえした.沢を渡り、しばらく植林の中を下っていくと林道に出た. |
2001年6月歩く. |
訪問のために |
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