南秋川の南に連なる山々を笹尾根という.尾根上を歩いてみるとところどころ笹の生えた場所がみられるから、
これに由来した名前であろう. この尾根の向こう側は山梨県の上野原町、尾根は多摩川と相模川水系の分水嶺であるとともに、生活圏をも 分断していた.それでも、そこに住む人々は尾根越えて行き来する必要があったから、東側の浅間峠から槇寄山のもとの西原峠までの間には、 5つの峠路がつけられている. 雪の残る真冬の日曜日、これらの峠路の背骨となっている尾根の上辿ってみた. |
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浅間峠 |
尾根には南秋川最奥の集落数馬からの登り道があるので、これを利用することにした.西原峠という名の峠に向かっているから、この道もかつては生活のための峠路だったのだろう.
武蔵五日市駅からのバスで数馬に行く.今日は緩い尾根を歩くだけだから、いつもよりは遅く家を出た.それでも、8時過ぎに電車は武蔵五日市に着いた.秋川は本当に近い.
いつも利用し、すっかり知り尽くした駅前のバス停に並ぶ.こんな冬の日であっても、もう何人かがバスを待っている.今度の数馬行きは8時57分である.乗客はさらに増え、臨時バスが
だされるほどになった.
数間までいってしまうと、登り口を過ぎていそうなので、手前の温泉センターで下車することにした.降りてからわかるのだげ、もうひとつ先の沖の平まで乗るとちょうど入口であった. 帰りのバスの時刻を確認してから歩き始める.ちょうど10時になったところである. バス停のすぐ南に架かる南橋という名の橋を渡り、舗装された車道を10分ほど登る.沢沿いに登ってきた車道は大きく向きを変えている.この角から未舗装の林道が先についてい る.どちらにすすむべきか迷ってしまう.ここには標識も建っているのだが、これも矢印の方向がどちらに向いているともとれる厄介なものだ.目指す峠の方角はまっすぐだから、林道に入り そうになったのだが、ここは冷静に地形図で確かめてみることにした.それというのも、たしか寺院を過ぎてから山道に入るようになっていたように記憶していたからだ. まだ寺院らしきものは見ていないからもう少し先だろう.確かめればその通り、舗装されている方を進んだ. 車道はすぐに民家の前で終わる.この民家の脇には細い道らしきものがあり、裏の畑の方に続いている.ここも目的の登山道かどうかちょっとわかりにくい.しかし、ちょうど庭先で 洗い物をしているようだったので、声をかけてみると、ここを入っていけば良いとのことであった. 畑はすぐ終わり、道は植林の中に入っていく.ここからしばらくは、ちょっとおもしろみがない.登り始めはどこでもこんなものだ.それでも次第に落葉した林が混じり始め、西側には三頭山 方面が見えてくる.また、北西の方角には浅間尾根越しに御前山や大岳山が見えている. 西原峠に近づくと、一面が落葉した林になった.そのうえ、一昨日降った雪もまだ積もったままであるから風景は文句なしだ.峠についたのは民家を後にしてから ちょうど1時間後であった.ここから峠路は山梨県上野原町の郷原に向かって下っていくのであるが、私の目的は笹尾根を縦走することである.まずは、すぐ隣の槇寄山によることにした. 槇寄山は1188mの三角点がある.少し広くて休むのに最適な山頂までは、歩いて5分もかからない.南側の木々は伐採されていて展望がきく.ちょうど正面に富士山が見えている. 今日は空気の澄みわたった冬の晴天だから、折り重なる尾根が遠くまで展望できすばらしい.反対側では、すぐ西に位置する三頭山の全容が見渡せる.三頭山までは近い.次はここから三頭山に登るのもい いかなと考えながら峠にもどる. 東に続く尾根道を歩き始めるとまずは枯れ草の原に出た.正面には御前山が見えている.奥多摩側からは平凡な山容のこの山は、秋川側から見るとどっしりと安定感のある姿である. さらに東側には、都心のビル郡が遠望できた.再び歩き始めると道は急な下りになる.すぐに坂は終わり、田和、上平方面への分岐が現れる.名はついていないが、ここも峠であろう.南側の 展望が良く、富士を眺望できる.峠は最も低いところにつけられているのであるから、いったんくだれば再び登り坂となる.この尾根の縦走では、小さな登りと下りの繰り返しがこの後も何回となく現れる.平行して 並ぶ峠の間を結ぶようにつけられたコースであるのだから無理もないことである. 次の笛吹峠は藤尾と秋川の笛吹を結ぶ峠路である.樹間に百番塔と書かれた小さな石碑が立っている.峠を歩き出して、また少しきつい登りが現れると十字路に出た.ここは、丸山への分岐である. 右に道をとると山頂に出る.三頭山方面の展望がある.樹間から見えるだけだから、冬だけの展望かもしれない.北西の遠方には、鷹の巣山も見えている. 丸山に続いて、小楓峠、土俵山と2つポイントを通過するが、これらは、標識でわかるのみで視界は期待できなくおもしろみはない.土俵山を後にすると、左手に御前山が見えていて、ゴールの浅間峠に近づい てきたことが実感できる. 南秋川の流れをはさんで向こう側に続いている浅間尾根が見える.こちらの尾根では何回も登り下りを繰り返しているのにくらべて、向こうの稜線は本当になだらかだ. 浅間尾根を人々が利用するようになった理由が実感できる.この辺りは、縦走を出発した西原峠よりは標高が低いようだ.雪は完全に解けてなくなっている.また植林の中を進む割合が増加してきた.ゴールに近づいてきたのだ. |
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西原峠 | |||||||
槇寄山からの富士 | |||||||
雪の尾根道を歩く | |||||||
笛吹峠 | |||||||
丸山 | |||||||
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小棡峠 | 浅間峠の道標 |
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