大山といえば霊山、近世はじめから由緒正しい遊山の対象であった.行楽地としての大山、中腹に建つ阿夫利神社下社まではケーブルカーも
あるから、まあ年をとってから、あるいは日の出でも拝みに登れば良いと、これまであえて触れずにきた山だった. 小田急線が鶴巻温泉駅に向かうあたりでは、車窓に三角形の姿を見せるこの山、 標高は意外にも1251メートルもあって、ほとんど平地といえるような伊勢原の平地からこの高さまで一気に聳え立っている. やや体調を崩した晩秋の休日、半日で出かけられる山を探していたとき、久しぶりにこの山のことを思い出された.アプローチが容易で高さもちょうど手ごろだったから、これを機会に大山詣をして みることに決めた.紅葉の季節、ケーブルカーの通う下社はこみ合うことだろうし、奥社のある山頂まで残り500メートルはいずれにしても登山道を辿らなければならない. どうせ登るなら人の少なそうなコースを選ぼうと地図を開けば、西南のヤビツ峠に登山口がある.大倉と並んで表丹沢玄関口として有名なヤビツ峠は海抜761m、秦野駅からバスが通っている. ここも山頂まで残り500メートル弱となり、1時間ほどで登れる.今回はこのヤビツ峠から登ることに決めた. 秦野駅からヤビツ峠行きのバスに乗る.休日ゆえに超満員でバスは出発した.大倉と違ってこちらは時間もかかるし、 市街地を抜ければ、カーブも多くなり、車体はゆれて、立っているのには辛抱が必要だ. 峠につき、バスから吐き出された人々の多くは表尾根に向かって歩き、私のように大山の登り口に向かったのはごく少数であった. ルートはさすがによく整備されていて、ゆるい登りをがんがん駆け上がっていく.左手に折れていくと、大山と西南西にある春岳山を結ぶ 尾根にルートは登っていくことになる.尾根の上に出れば、進行方向は山頂のある東に向きを変え、そのすぐ先にはベンチが設置されていた. 山頂方向の見通しが良く、.見上げた山頂はすぐそこにあるように見える一方、まだ結構高そうで先はきつそうにも感じる. 峠を出てまだ20分ほどしか過ぎていなかったが、一応ここで休んでいくことにした. 再び歩き出すとすぐ急な登りに入り、さっきから樹間に時々見えていた三ノ塔がよく見えるようになった.少し上で歩道の西側が大きく崩れているところでは、塔ノ岳に向けての表尾根の全貌を見渡せた. 北の方角には3つのピークが並んでいるのがみえていて、これは丹沢山から宮ヶ瀬に続く尾根にある丹沢三峰のものだ. ここを過ぎると、すぐ下社から登ってくる歩道に合流する.山頂まで残りは200メートル.参道であるから趣は一変しにぎやかになった.鳥居を越えると前社があり、その先に奥社と山頂がある. 山頂はさほど広くはなく、弁当を食べる隙間を探し腰をおろす.南側に高い山はまったくないのだから、 天気がよければ見下ろす平野の眺望はすばらしいことだろう.あいにく今日は視界はかすんでしまっていて、山腹のあたりを見るのがやっとだった.ここなら天気の良い日に出直してくれば良い.今日はあきらめて さっさと下山することにした. 東側の日向薬師に下山するルートを選ぶ.見晴台方面に向けて歩き始めると木段のつけられた急な下りが始まる.下社3.1km、日向薬師5.9kmと書かれた指導標がたつ不動尻の分岐に出た. ここからは、ほどほど整備された狭い下り道で、がんがん標高を下げていった.登ってくる人にも結構出会うが、遊山気分で山頂まで登るのはちょっときつかいかもしれない. 下り始めて50分ほどかかって見晴台についた.名前のとおり山頂方面がよく見えていて、たった今下ってきた斜面を振り返ることができる. 下社から道が続いていて、広場は昼食を取る行楽に来た人々でいっぱいであった. 日向不動の道を下り始めると、あたりの木々が切られていて、下社も見えている.中腹あたりは紅葉の季節で、もみじ狩りに下社に訪れている人も多いことだろう.尾根の背に沿って東に 進んでいくと、キャンプ場の分岐が現れた.さらに東に進むと九十九曲がりの急な下りが始まる.それも大して長いものではない.車道にでたのは、見晴台を出発して30分強であった. 車道の反対に下り道が続いていて、沢に沿って下っていく.辿っていくと青年の家の横を通り再び車道にもどった.ここからは、舗装された車道に沿って日向薬師のバス停までのんびり歩いていく だけだ.山間の風情が残る静かな道を進むと、折り返し場のあるバス停が現れた. |
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大山(三ノ塔山頂より) | |
尾根の上の休息ベンチから山頂方向を見る. | |
鳥居を越えると山頂 | |
見晴台より山頂 | |
大山阿夫利神社下社 | |
下社からの登山道が合流するすぐ手前は谷側が崩壊していて、西から北の眺望が楽しめる. | |
表尾根.左手山頂が平なのが三ノ塔.右手奥が塔ノ岳. |
北西には、丹沢三峰が見えている.三峰は丹沢山から東北東、宮ケ瀬に向かう尾根上の太礼、円山木、本間の頭(地形図では西、中、東)と
名のある三峰をさしているらしいのであるが、眺望したとき顕著なのは、中峰と東峰の間にある無名峰を含めた東側3つのピークである. |
御前山よりみた、大山.奥多摩の御前山は、大山のほぼ真北に位置する.こちらからみても大山はきれいな2等辺三角形の姿をしている. |
course time |
ヤビツ峠 →55分→ 山頂 →10分→ 不動尻分岐 →45分→ 見晴台 →35分→ 車道 →10分→青年の家 →25分→ 日向薬師バス停 |
交通機関:往路 秦野駅より蓑毛行(一部がヤビツ峠行き).帰路 日向薬師より伊勢原駅北口行き. いずれも神奈川中央交通による運行. |
大山 大山 |
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