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登山

 

 屋久島の特徴といえば、島であるにもかかわらず2000メートル近い山々をいくつも有する点にあります. これらは、ほぼ島の中央部に並んでいて、地元では集落の裏から始まる低い山々である前岳に対して奥岳と呼んでいます. 奥ということばには隠されたものという印象ももちますが、実際、永田集落から見ることのできる永田岳付近の峰々を除けば、 奥岳の山々を集落から見ることはできません.  その奥岳に広がる深い森は、荒々しい環境を反映し、密生した木々は複雑に枝を伸ばしています.多雨、高い湿度によって、 木々は根元から樹皮まで苔に覆われ、豊富な水は歩道まで流れ下ります.一面の笹の上に花崗岩の露岩がのった稜線部の風景と、 国内のほかの山では味わえない登山を経験できます.  屋久島の魅力を最大限体験したいのであれば、やや困難ながら登山は必須です.屋久島に興味を持ったら、計画を十分に立てて 一度挑戦してみるべきでしょう. Trails_map.gif 永田歩道 大株歩道 奥岳  屋久島の最高地点は、九州一高い場所でもある宮之浦岳で、海抜1935mもあります.島の山に登るとなれば、まずは、この宮之浦岳が 候補になります.ほかの高い山々も、この周辺に並んでいますので、天気がよければ、縦走によって一帯の峰々をまとめて見ることができま す.
 宮之浦岳など奥岳には、それぞれの集落から始まる岳参り道があります.起点から島のほぼ中心に位置する奥岳山頂部に達するために は、島の半径を歩かなければならないことから、これらのルートが選択されることはまれで、利用者の少ない歩道は自然に帰る運命にあるよ うです.あえて利用する場合は地元でその状態について聞いてから出発すべきです.
 そこで、一般的には島の森林を切り出していた時代、林業の拠点となっていた海岸線の集落から、奥岳の手前まで切り開かれつけられた林道 を使うルートが選ばれます.アプローチに車を使えることから、歩行時間を大幅に節約でき、代表的な淀川登山口では宮之浦岳の日帰り往復も 可能になっています.
 安房林道には紀元杉までバスが運行されています.まだ少し手前なりますがこのバスでアプローチし、岳参り道の尾の間歩道上部だけを利用 するのが淀川口です.歩き始めて1時間ほどで、非難小屋もあることから、ここで一泊、翌日早朝発で奥岳を縦走する場合にも使われている 入口です.初めて奥岳に登るのであれば、普通はルートがしっかりしているここを選ぶことになります.
淀川口 淀川口:歩道には先客がいました.
淀川登山口 途中にはヤクスギランドがあり、一般にも開放 されている安房林道が利用できることからメインの登山口となっています.安房林道を紀元杉の少し奥まで辿ると登山口があります.30分ほど進んで 淀川(よどがわ)を越えるところに淀川小屋があります.
 大株歩道を経由した宮之浦歩道と並ぶ奥岳のメインルートで、淀川入口ですでに海抜1360m あります.コース中には、国内最南の高層湿原である花之江川(ハナノエゴウ)もあり、ここで栗尾からの歩道と合わさって、その先の投石平から 稜線部に出て宮之浦岳山頂に向かいます.
 この歩道で一泊するとなれば、淀川小屋か石塚小屋のどちらかを使うということになりますが、淀川小屋は登山口から30分ほどですので、 早朝林道発とさほどメリットはありません.バスを利用する場合は、前日ここに泊まることになります.
 石塚小屋は、屋久杉ランドより登ってくる安房歩道の途中にありますので、花之江川から小屋まで1時間ほどもどることになり遠回りになるだ けです.縦走であれば、早朝タクシーで林道をアプローチし、淀川口からピークを超えて新高塚小屋まで歩いて、こちらで一泊するのが普通のようです.
淀川 淀川橋 木
淀川 淀川橋 苔むした木
高盤岳 小花之江河 花之江河
高盤岳 小花之江河 花之江河
縄文杉 Jomonsugi
屋久島を代表する存在、縄文杉へは大株歩道を辿ります.ここまでで往復10時間、 訪問には体力と計画が必要です.
宮之浦歩道 屋久杉ランド手前で、安房林道から分かれる荒川林道に入り、終点より森林軌道をたどり、 北側から宮之浦岳山頂に向かうのが大株歩道−宮之浦歩道コースです.大株歩道は、名の由来となっているウィルソン株や大王杉、縄文杉な どを経て歩くことになり、これらの訪問者のためにコースもよく整備されています.縄文杉のすぐ先にあるのが高塚小屋で、ここで旧宮之浦歩道を交え、稜線に登っていく ことになります.
 淀川からのコースよりも長く、よほど健脚でないかぎりは宮之浦岳まで日帰りで往復することは不可能ですので、基本的に一泊二日の日程を要します.宿泊は高塚小屋か、その1時間 ほど先にある新高塚小屋のいずれかを利用することになります.宮之浦岳山頂に達し、そのままもどる場合も時間を要することから、通常は淀川小屋側に向けて峰々の間を縦走し下山します. ただし、八重岳と呼ばれるピーク群の中で、永田岳だけは宮之浦岳より北西の位置にありますので、もしこの山頂も踏んでおきたいのであれば、宮之浦岳のピーク北にある焼野三叉路から、 先に寄り道しておかなければなりません.
軌道
 屋久島の登山を計画するにあたって、心得ておいてほしいのは、この島の山々の険しさと変化しやすい天候です.このことは、反面2000mに 満たない山とは思えないほど充実した景観を与えてくれることになりますし、悪条件の登山をなし遂げた満足感を与えてくれることにもなります が、無事戻ってきてこそ、貴重な体験となりますし、せっかくならいやな思いはできるだけしないにこしたことはありません.
 雨量の多さがまず問題です.まずは足元、雨具は念入りに準備をしてください.屋久島へは、よほど運がよくなければ雨に降られないことはないと考える くらいの覚悟で出かけるべきです.雨に降られると、山頂部では登山道が雨水の放水路となっているようなところも多いので、防水性の高い靴が必要です. 時にくる滝のような雨には、撥水の状態のよい雨具がいります.
 幸い南の島ですし、標高も低いので、夏季であれば濡れたところで体力を奪われ事故に至るほどのことがありませんが、体をぬらさないことが 山歩きの快適さにおいて大きく寄与します.
 計画を立てるとき時間配分も注意がいります.まず、土が流出していたり、笹に覆われたりと登山道の状態が悪いことも念頭において検討する必要が あります.山頂の海抜だけで判断し、整備の行き届いた本土の山を登るような心持ちをこの島の登山に持ち込んではなりません.
 時間に余裕をもっていれば、数分で終わる激しいスコール状の雨をやり過ごすこともできますが、前も見えないほど、たたきつける雨の中を進むのは適切で ありません.

 雨天時の視界の悪さも注意が必要で、深い森林の中に迷い込んでしまうと取り返しがつかないことになりかねないので、判断が難しければ 引き返すべきでしょう.それと、渡渉点においては雨後の増水に注意がいります.さすがに長い降雨後の沢は怖くて渡れないと思いますが、その場合、 引き返してどう戻るかについてあらかじめプランをたてておく必要があります.
その他のルート 林道から登る入門者コースにもの足りないと感じるのであれば、集落に始まる岳参り道を使うことになります.島の南端の尾之間からは、 尾之間歩道があります.これは淀川口登山道の本来のルートであって、安房林道から上はこのコースと一致します.歩道の起点には尾之間 温泉がありますので、下山に利用するとよさそうに感じます.やはり島の南より登っていく、栗生・湯泊歩道も花之江川でこのコースと合流し、南から稜線上 を辿って、宮之浦岳に向かっています.
 島の西部から登る、花山・永田歩道は、最初に永田岳に登っている点が 特徴です.これらの2つの歩道が合流する鹿之沢に避難小屋があり、ここで一泊して翌日山頂に向かうことになります.
 これらの歩道は利用者も少ないだけに自然に触れる趣を楽しむには最適ですが、反面危険を伴います.私は永田歩道以外のコースを利用した経験がないので、 状態についてはまったくわかりません.いずれにしても、利用するのであれば、より入念な計画を立て、出発前に地元で現状を確認してください.
 永田歩道を利用した経験から少なくとも言えることは、時に踏み跡を探すのに苦労させられることです.大自然の中で道を逃さないという緊張感の連続が、 これらの道から登る魅力でもあるわけですので、もし自分の経験に本当に自信があるのであれば、このような道を挑戦してみるのもよいかもしれません.
紀元杉 川上杉
紀元杉 川上杉
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Rock奥岳  島中央部に並ぶ峰々奥岳.
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私の登山記録
大株歩道
 有名な縄文杉を経由して奥岳に至るルートで、 縄文杉の訪問者で込み合います.杉を見て帰る人が圧倒的多数でしょうが、宮之浦岳の下山路としても重宝します. 荒川林道から森林軌道を歩いていく区間は、勾配も緩く整備されているので、歩きやすいので、思いのほか進めますが、距離が結構長いので時間は要します. ほどほど疲れたころ、軌道の脇から、核心部であるウィルソン株から縄文杉に至る区間が始まります.原生林の中を這い回る木道を登っていいきます縄文杉を 過ぎると、まもなく高塚小屋が建っていて、宮之浦登山道に合流します.
永田歩道
 奥岳へ集落のある島周辺部の海岸から登るとすると、出発点の海抜はほぼ0mにになります.島内のいくつかの集落からは奥岳にいたる歩道がつけら れていてこれらを利用できますが、いずれも距離が長く、高度差も大きいことからめったに利用されないようです.私は、海抜0mからの登山にこだわって、島西部の 永田集落を起点にした永田歩道を踏破してみました.
七つ渡し
 永田歩道からの登山の1日目は、永田岳の下にある鹿之沢小屋という避難小屋で終わります. この小屋の少し手前には、七つ渡しとよばれる美しい徒渉点があります.増水していれば非常に危険な場所となるのでしょうが、 幸いこの日の天気は晴れていて格別の光景を楽しむことができました.
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