紅葉の時期、行楽客でにぎわう西沢渓谷は、その源を奥千丈岳に辿れる.
国師ケ岳から甲武信岳にかけてその源を有している西沢、東沢2つの急流は合わさり笛吹川となる.この谷にそった戸数500ほどの山村が東山梨郡三富村である.
西沢水源部の南側を囲み、東沢との合流点まで続いている稜線中に黒金山、2232メートルのピークはある.
この黒金山の山頂は西から北の視界が優れ、西沢源流部をはさんで国師ケ岳、甲武信岳、雁坂嶺と奥秩父の主稜線の峰々の姿が並ぶ.少し遠いが南西には南アルプスの峰々、南は富士山
とここの眺望は文句のつけようのないすばらしいものだ.しかも、同じ三富村の乾徳山とは対象的に、この山の訪問者は少なく静かな山頂を満喫することができる. この黒金山への登山道としては、西沢渓谷の探勝道終点、七つ釜五段の滝の上、軌道跡からのルートは良く知られている.また、この山の南に派生する稜線上の乾徳山を経て徳和から この山まで往復することも可能だ.いずれのルートも日帰りでは、ちょっと時間がかかりすぎて、バスでアプローチする場合、最終に間に合うか不安の残る行程になる. 国土地理院の2万5千分の1地形図には、三富村、青笹集落からは黒金山の北東部にある牛首に向けて青笹川北の尾根を登っていくルートが記載されている.このルート 利用者も少なく、整備も行き届いていないが、距離は短い.バスの時刻に余裕をもって往復することが可能だ. |
北斎の凱風快晴に描かれた、谷筋にのみ細く残雪の残る富士. | |
南西の方角には南アルプスの峰々一列に並ぶ. |
塩山駅より西沢渓谷行きのバスに乗る.天科バス停を乗りすごしてしまいあわてて次の円川で下りた.バスが登ってきた車道を天科までもどり、赤い橋で笛吹川の対岸に渡る.
ここが青笹集落であるが、あたりに登山道入口の表示はまったくない.地形図の歩道は青笹川北岸から突然始まっている.まずは、青笹川に沿ってつけられえた車道を登ること
にした.砂防工事用の道路なのであろう.沢の勾配とともに一気に登っていく.行く手を阻む、新しい堰堤のところを対岸に渡り、踏み後を探して斜面を登ると、歩道らしきものが沢
奥にむけて続いていた.ここを辿ると次の堰堤の上で支沢に沿って北側に折れていく.地形図と異なっているようだが、ほかにはっきりした道があるわけでもないから、道筋を辿ると
植林中を登り、まもなく沢に出た.対岸に歩道は続いていた.初めての道標をみつけ、この道は牛首に続いていることの確証を得た.急勾配になると、踏後は急に不明瞭になるが、
過ぎるとまたしっかりした道筋が現れたりと、コースを失うことはない. 葉を通した陽光の鮮やかな天然林になり、道は左にむけて折れていく.テントがはれそうな空いた場所から、笹の多い道をさらに左に向けてに折れていく.尾根を外れたように感じて 少し不安になるが、先ほども乗り越えた太いワイヤーが現れ、方向はあっていそうな感じで一安心.尾根の東側に出ると道幅は狭ばまった.再び尾根の背に戻ってカラマツ林の中を 進むと林道に出た. 林道上は視界が広い.南西に乾徳山の山頂が見えている.東側は笛吹川の谷の向こうにピークが並ぶ.まず稜線低まったところに笹原のある雁坂峠が目に入る.そこから右に目を やると、ピークをはさんで皺状に笹原がある.雁峠から雁坂峠まで歩いたとき、古礼山の手前に笹原があった.そのときはやや曇っていたけど、もし晴れていれば、向こうからも今立っ ているところがはっきりと見えていたのであろう. その南に、かなり低くなっているところが雁峠であって、すぐ隣が笠取山.峠からみた円錐のピークの印象が強いから、麓から独立峰のようなこの山を思い浮かべていたけど、 実際には唐松尾山から続く稜線の中の一ピークといった位置づけだ.そのとなりにもいくつもピークが並ぶ. 今度は雁坂峠より左に稜線を追っていくと、ゆるい登りの先に雁坂嶺がある.一旦下がって、次にあるのは破風山.東西2つのピークとそれを結ぶ稜線の形作る台形は、破風 という名があらわす姿そのものだ. 牛首への歩道は、笹の中を登っていく.最初登りは幾分急勾配が続くが、水のある沢を越えると平らな場所に出た.地形図上の黒い点はこのあたりであろう.歩道脇に丸太が立てられ ていて、これまで何回もまたいできたあのワイヤーはここへの荷揚げのため敷設されていたものかもしれない. 前方、谷の奥には、三角形のピークが見え、その左手には、幅広い大きな山体が重々しく横たわっている.最初は、山頂部に岩の見えるとがったピークが黒金山かと思ったけれだ、地形 図をみていけば、左のゆるい大きなほうが黒金山で現在地とは沢のほぼ対岸になる.まだ先は長そうだ. 水のほとんど流れていない沢を越えたあたりで道は左に折れていく.次に沢の詰まってきたところでは、さきほど見えていた、とがった方のピークに向かうと思われる踏跡が上に向かっ ていた.そのまままっすぐ進み林の中に入ると、踏跡が急に不明瞭になってきた.登りになり、前に黒金山が見えると、ここから下りに変わったから、もう牛首に着くかと期待したが、再び 登り直して、笹原に出た.ここが、牛首で西沢からの道もここで合流している.南側の視界がよく休む登山者の姿もあるが、ベンチも、指導標も荒れている. 牛首からは山頂にむけてゆるい登りが続く.前が明るくなったからいよいよ山頂に達したかと思いながら登ってみるとまだ先がある.この繰り返しでなかなか山頂につかない.岩の転がる場所 に出、ここを過ぎると、西側が開けた山頂に出た.三角点の標石山梨百名山の表示がある.斜面一面に敷き詰められた石の上を慎重に踏みながら、下に降りていき腰を降ろした. 西の向かいは国師ケ岳の稜線.北には三宝山と木賊山にはさまれた甲武信岳の山頂がある.右手に目をやると雁坂に稜線を追うことができる. 南アルプスの峰々をひとつづつ確認できる.南東木々で視界がなくなるすぐ右には、谷沿いだけに白く残雪の線を浮かべた富士山の姿があった. |
林道に出ると、すぐ西に乾徳山が見えている. | |
林道からみた山々.写真左:窪みが雁峠、その右のピークが笠取山. 写真下:古礼山から雁坂嶺. | |
破風山 |
林道を後にすると、富士を見ながら登りになる. |
黒金山が見えてくる. |
西沢渓谷から登ってきた歩道は牛首で合流する. ここは南側の展望に優れ、乾徳山、その先には富士が鎮座している. |
山頂に到達すると初めて、西側が開け、2231.6mの三角点が設置されている. | |
すぐ西には、西沢の源流部をはさんで国師岳が対座する. | |
国師岳. | |
黒金山山頂から見た山頂雁坂嶺から破風山. | |
甲武信岳. |
甲武信岳. |
牛首からみた乾徳山. |
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