山都町は福島県の北西部の人口4200人、小さな山間の町です.
福島、新潟、山形県境部に位置する飯豊山山麓にあり、阿賀野川が町南部を流れています.喜多方を出た磐越西線は、日本海に向けて流れるこの阿賀野川に
沿って走るようになり、新潟県の新津に向かいます.山都町には山都駅があり、そのすぐ東側、飯豊山山麓を源とする阿賀野川の支流である一ノ戸川に、16支間全長445メート
ルの一ノ戸川橋梁が架かっています.
1910年、磐越西線は喜多方より山都まで延長されました.この一ノ戸川橋梁は1908年に架橋され、その中央部、河川をまたいだ最長の一支間には、Cooperの標準設計による
American Bridge社製Baltimore trussが使われています.このトラス部、200フィートの標準設計ということで1900年から1910年代には長支間に採用されていたようですが、や
がて架け替えなどによって消えていったようで、「日本の近代土木遺産」には、現存は5橋のみと記されています.標準設計によるものなので、これらのスパンはいずれも62.408
メートルと同一です.
隣の西会津町には、磐越西線蟹沢橋梁があります.また埼玉県の秩父鉄道に同型トラスを使った、浦山川、安谷川橋梁の2つがあります.これらの2橋は、磐越西線の
当麻(たいま)橋梁(新潟県鹿瀬町)が、1929年、鹿瀬ダム建設にともない新橋に架け替えられた時、転用架設されたもので、もともとは磐越西線のものとあって、本橋の兄
弟格です.
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斜材が変則的に分格されているボルチモアトラス. |
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鉛直材とeyebarの下弦材はピン止めされている. |
最後の1橋は、中央線の複線化によって使用されなくなった立場川旧線のものです.中央線には、他にも同型トラスが使われていたようですが、立場川のもののみが残っ
ているようで、幸い撤去されずに今でもみることができます.富士見駅のすこし手前、八ケ岳側のさびついた橋の姿を記憶にもつ方も多いと思いますが、これが立場川橋梁です.この橋の特徴: まず上路であることがあげられます.私がこの橋の写真をみたとき、驚かされたのはこの点でした.トラス橋といえば、通過時、車窓に一定間隔で繰
り返される明と暗がまず思い浮かびます.これはレールが最下部に敷設されている下路橋だから、トラス構造が視界に入ります.ところが、この橋のような上路橋では、肝
心のトラス構造を車窓からまったくみることができません.音を注意していなければ橋梁を越えたことさえ気付かないかもしれません.上路構造はアーチ橋には多くあります
が、トラスではかなりまれなようです.
その2、トラスの構造がBaltimore trussといわれる構造(写真上)のものであることです。トラス橋には数々の形式があります.プラットトラスは上下弦材にはさまれた鉛直材、そのはす
に入れられた斜材から構成されていますが、Baltimore Ohaio鉄道に基づいて名づけられた、このタイプでは斜材の中央から短い鉛直材が立つという複雑な構造をしています.
日本では、上に書いたように現存するのは5橋のみであり、大変珍しいものといえます.
さらに部材の接合点(格点)がピンで止められているピントラスという19世紀後半アメリカで普及していたトラス構造の点が注目されます.この方式は、この橋がつくられた1910年
ころからアメリカでは使用されなくなり、少し送れて明治末期より導入された日本においても短命だった方式であるので、橋梁技術の歴史を語る存在となっています. |
訪問する:JR磐越西線山都駅から徒歩10分程度ときわめて容易におとづれることができます。
バス停のある駅前より東向けて歩きます.踏み切りを越え、山都町の中心地を抜けると、一ノ戸川橋梁の西側に出ます. |
追記:山都町は、平成18年1月4日より、東隣の喜多方市と市町村合併により、喜多方市に組み込まれることになりました。 |
LINK: 喜多方観光協会 喜多方市
西会津町 会津若松観光物産協会会津若松市 |