棒ノ折山
棒ノ折山山頂
 奥多摩の低山としてよく登られている高水三山の北、埼玉県との県境に 棒ノ折山はある。手ごろな標高、山頂の見晴らし良さに加えてアプローチの容易さもあわさり、 気軽なハイキングの対象として重宝する山であるが、それゆえ、行楽シーズン、歩道も山頂も 騒がしい山でもある。

標高969メートルと1000メートルにあと一歩、この展望のよい山頂へ は3つのルートがある。

1つめは、名栗側から登るもので、飯能市河又が起点。さわらびの湯入口まで飯能駅よりバスでアプローチ できる。尾根道、白谷沢と、他に湯基から登るルートもあって、これらは岩茸岩で合流する。この先、西南に 向かう尾根の登りをつめればゴンジリ峠に着き、ここで青梅側から来たルートと交わり、最後の木段のついた急 登が待ち受けている。これを終えて山頂だ。

2つめは、大丹波川の奥茶屋から入るルートで、青梅線の川井駅からバスがある。バスの終点は清東橋か上日向 で、まずは車道を奥茶屋まで歩くと、登山路の起点がある。このルートは短い尾根を一機に山頂まで登っていくので、 コースタイムも最短だ。

3つめは、青梅市北部の小沢峠から登っていく成木口ルート。奥多摩の低山として人気のある高水三山登山口も ある上成木へは青梅または河辺駅からバスが通じている。終点上成木でバスを降り、飯能に抜けている道路沿いを歩 くと、すぐに小沢峠の下県境を貫くトンネルの前に達する。手前に小沢峠に登る歩道の入口がある。

この中で利用者の多いルートといえば名栗側のもののようだ。駐車スペースもあり、下山後さわらびの湯で汗を 流すこともできる。ハイキングコースとして最適であるからであろう、家族ずれも多いコースであるが、歩道の登 りは意外ときつい。

アプローチの点からみれば、青梅線とバスの組み合わせで入れる、多摩川側の登山口が便利である。奥茶屋ル ートは、短すぎて棒ノ折山に登るだけではものたりない感じもする。高水三山や日向沢ノ峰の縦走を含めて利用す るのがよいのかもしれない。 小沢峠からのルートは、黒山を経由していることから棒ノ折には少し遠回りになっ ている。それゆえにか、ほとんど選ばれることはないコースで、静かなのが魅力だ。バスは比較的運行されている 場所なのでアプローチも問題ない。ここでは、この成木口から棒ノ折山に登るルートを紹介することにした。

上成木から登る

静かな山歩きを求めて、私が初めてこのコースを歩いたのは2000年春のことでもう9年も前のことだ。

青梅市が埼玉県に接している青梅市北部にある小沢峠は、その下に掘られたトンネルで青梅秩父線という道路が 入間川に越えている。その手前に上成木という集落があり、調べてみるとこの上成木まで便数こそ多くはないが、 バスが運行されている。しかも、それは都営バスであった。

緑色の都バスが山間の辺鄙なところ走っていることも不思議な感じがして、いよいよ出かけてみたくなった。 このバスは青梅駅発であるのだが、休日の朝だけは、なぜか青梅線で2つ手前、河辺駅発と変わる便がある。

それまで、奥多摩に向かうたび青梅線に乗っていたはずなのに、駅名すら憶えていないような印象の薄い駅、河辺駅に、 このとき初めて降りることになった。

上成木行きのバスが止まるバス停は北口にある。この河辺駅は住宅街の玄関 といった感じで、休日の駅前は閑散としていた。ほとんど乗客のない北小曽木経由上成木行きバスに乗り、青梅市 の北部を40分ほどの旅路をバスで楽しみ、目指す棒の折に向かった。

上成木バス停へ

今年、新緑の季節、再びこのコースを歩くことにした。河辺駅北口にはビルが建ち、高架歩道ができたりして、 近年大きく変化しているが、バスが走り始め車窓に現れる風景はそんなに変わるものではない。

バスは成木街道を進み、吹上 トンネルを越える。そして北小曽木経由のバスは、まず北小曽木川に沿って登っていってから引き返す。続いて、成木川 に沿って終点である上成木バス停まで登っていくルートをとる。

ところで奥多摩入口の町、青梅、市街地はいうまでもなく多摩川沿いに発展しているのであるが、青梅線のすぐ 北側ですでに入間川水系となっていて、すなわち荒川の源流部になる。成木川も、青梅市の北縁を流れ入間川と合流して いる河川で、入間川の名栗地区との間には、埼玉県との県境ともなっている長い尾根が続いていて、小沢峠はこれを超 えている。

上成木バス停は高水山登山口でもあるから、バスに登山客が乗っていても、その多くはこちらに向かう。小沢峠へ は、バス停右手の車道を進まなければならない。数分歩くと、峠の下に掘られたトンネルの前に架かっている橋のもとに 出て、ここを右手民家の方へ入ると、歩道入口があって、まもなく十字路になった峠に達する。

そのままこの歩道を進むと、名栗の小沢集落に下っていくようで、それゆえこの峠の名があるようだ。かつてそれ ぞれの川筋の人々がここを往来していたのだろう。

小沢峠から黒山

左手に登っていくのが、これから進む、県境線の引かれている尾根を歩き黒山に達する歩道で、最初は植林中 の急坂が続く。峠の少し上で地形図は456メートルと表示されているから、棒ノ折山頂まで500メートルの 登りがあることになる。少し進むと成木川側を見下ろせるようになる。谷向かいの高水山側の山々の大部分は植林 であって色彩に乏しいが、わずかに残された雑木林の新緑が鮮やかだった。

このルート、全般にゆるい登りの歩道が続いているのであるが、ときどきピークにかけて急坂も現れる。20分ほど歩くと、名栗側が見下ろせる場所に ベンチが設置してあった。この先、植林中の平坦な歩道を30分ほど歩くと、植林中の急斜面の登りになり、北方 に形の良い棒ノ折山のピークが見えるようになる。

自然林の中に入り、新緑の天井の見ながら登ると黒山0.6kmの標識が立っていた。すぐ前の急坂を這い上が るとまもなく、さきほどの表示よりるかに早く黒山に出てしまった。山頂の小さな空間にはベンチも並んでいる。 中心に3等三角点の標石があって、高水三山の岩茸石山からくる尾根はここで合流している。

棒の折山頂へ

黒山の先は急な下りになる。正面には、まだまだ高く見える棒ノ折を見ながら、鞍部まで下り、権次利(ゴンジリ) 峠への急登を登らねばならない。この峠、鞍部にあるのではなく、最後の急登を残した棒ノ折山のすぐ手前 にあり、ここで名栗側の歩道が合流している。

ここまでの静かさがうそのように、ここから、歩道は騒がしくなり、 休日のハイキングコースの趣きに急変した。峠の標識によれば、山頂までは0.5km、平らな道はすぐ終わり、山 頂まで続く長い木段に変わって、気のめいる登りが始まる。

棒ノ折山の山頂は広く東側の展望もよい。表示のよれば、所沢や新宿副都心、また日光の男体山あたりも見 えるようであるが、残念ながら今日はかすんでいて、まわりの奥武蔵の山々を望むことができる程度だ。

眺望 を求めて、空気の澄み切った冬に登るべきだろう。最初に登ったとき以来、そう思い続けながらも、冬には出 かけずじまいになっていたのを、ここに立って再び後悔した。

小沢峠
小沢峠
植林
植林中の道を進むと、時々標識が現れる.
植林
黒山への後半は、傾斜のほとんどない歩道が続く.
植林
黒山が近づく.名栗側が自然林で新緑が美しい.
植林の中の道が終わると黒山(2000年撮影)
Kuroyama
黒山の頂上(2000年撮影)
木段
山頂に向かう長い階段
棒ノ折山頂 棒ノ折山頂
山頂

あえて来た道を下る気もしない。山頂からは大丹波川の奥茶屋に下ることもできるが、バスの運行は少なく川井駅ま で車道を歩いていく覚悟がいる。車道を歩くくらいなら黒山にもどり、そこから南に進んで高水三山、岩茸山と惣岳山 を縦走し御岳駅に下る方法もある。

さわらびの湯のある名栗側へ下ることもでき、これがもっとも良い選択といえるだろう。西武線飯能駅行きのバス は比較的運行されているから帰路の心配もないし、なにより温泉で汗を流せる。分岐のあるゴンジリ峠にもどる.そこか ら東に向かい尾根の背を下り右に折れたところに岩茸石があって、そこで道は3つにわかれている。

左が有間ダムの名栗湖に流れこんでいる白谷沢沿いに下る道である。石のすぐ横を通りぬけた先は、河又まで尾根を 下ていくものだ。右は湯基に下る道であって、いずれも1時間ほどの道のりとなる。前2つは、さわらびの湯に出ること ができ、そこのバス停から飯能駅行きバスに乗ることができる。

私は使ったことのなかった尾根道をさわらびの湯に下ったが、全般に植林中の下りが続いているこの道をわざわざ選 ぶ必要はない感じだ。沢が凍結して危険な冬季以外は、さわらびの湯に下るつもりなら白谷沢のルートを使うべきだろ う。そんなこともあって、ここでは2000年に下った白谷沢の記録をそのまま残すことにした。

白谷沢を下る

私は入間側に下ることに決め、まずゴンジリ峠に戻る.ゴンジリ峠から有間ダムへ向けての下り初めは、東に向かいほぼ 一直線に急坂が続いている.10分で岩茸石についた.ここは十字路になっていて岩の脇を直進すると、尾根を伝って有 間ダムの下、河又橋に向かえるようだ.右は頂上からも見えていた湯基入林道へ出てしまう.こちらをいけば、 名栗川橋バス停まで3kmと近そうだし、名栗温泉もある から候補としてはけっこう魅力がある.

しかし、今日は白谷沢に下ることを決めていて、左に道を取った.こちらは登りによく使われているようであるの だが、沢沿いだけに傾斜は急であってその分時間は短くなる. 途中には、白岩、藤懸の滝もあって、これらにも立ち寄 っていきたいし、下りきった先に村営のさわらびの湯もある.日の高い時間から、一風呂あび帰るのは、低山散策の醍醐 味ともいえるものだ.

降りはじめればすぐに沢の源頭に出て、その下には林道が通っていた.この流れがこれから下る白谷沢であって、すぐ脇 に歩道がつけられていた.冬季や雨天時など利用しないように表示されているのは、一部で完全に沢床を通ることになるか らであって、この部分では増水や凍結による事故が起こりえるからだろう.マムシに注意の看板もあった.

下り始め15分ほどで、この谷の核心部に入ったようで、白孔雀の滝が落ちていた.歩道の脇から覗き込めるようになっ ているが、もし下から見たいとなれば、沢を伝わなければならないので少し難しそうだ.今日は、見降ろすだけで満足する ことにした.次の藤懸の滝も、歩道からはのぞき込めるだけである.少し下に踏跡があるのでここをたどると、滝の下に出 ることができた.2段に落ちる滝であるが高さはさほどない.

滝の上から足を滑らしたのであろうか.あるいはもっと上から水で流されてき たのかはわからないが、滝の下に鹿の死骸が落ちていた.死体に大きな損傷はなくここで死んだ感じがした.水を飲みにで も降りてきて死んだのだろうか.沢筋では動物の死骸を目にすることがある.

藤懸の滝を後にすると、歩道は沢を離れ林中に入っていった.その先20分ほどでダム湖脇の車道に出てしまった. 有間ダムの上を越え、対岸の車道を下っていくと、さわらびの湯の広い駐車場が現れる.飯能行きのバス停もここにある.

入浴施設は、駐車場の一番奥、休日とあって混んでいたけれど、春の日差しの中、沢音を聞きながら、山々、木々を見上げ ながらの入浴は本当に気持ちが良かった.

汗を流し終えバス停に向かう.後は、襲い掛かる眠気と格闘しながらバスで入間川を下るだけで、川沿いにくねくねと曲がる 道路も終われば飯能の市街地に出て駅に着く.

岩茸石
Fijikake
藤懸ノ滝
白孔雀ノ滝
滝見遊山

百軒茶屋から棒ノ折(別コース)

もっとも短時間で山頂に達するのは、西南の大丹波川、百軒茶屋から登るルートである。大丹波川に沿った上成木川井線 には、西東京バスによって上日向または清東橋までバスが運行されていて、青梅線川井駅より利用することができる。

バスを降りたら道路を北に進むと、清東橋を渡ると百軒小屋のキャンプ場があって、この先を河原に降り流れを渡ると 登山道が始まる。

最初は山葵田のある沢沿いを登るが、後半は植林中の登りが続き面白みはない。やや急な登りを 登っていくと、登山口から約1時間ほどたったころには東側が開けた展望の良い山頂に立つことになる。

百軒茶屋
map
course time JR青梅線河辺駅 35分(バス)arrow 上成木バス停 10分arrow 登山道入口 10分arrow 小沢峠 60分arrow 標石のあるピーク 20分arrow ベンチ 25分arrow 黒山 20分arrow ゴンジリ峠 10分arrow 棒ノ折山 10分arrow ゴンジリ峠 10分arrow 岩茸石  10分arrow 林道 15分arrow 白孔雀の滝 40分arrow ダム湖 20分arrow さわらびの湯 35分(バス)arrow西部池袋線飯能駅
sawarabinoyu
さわらびの湯
交通機関
往路:上成木(高水山登山口)へは、都営バス、梅76甲(上成木行)を利用. 青梅駅か経由する東青梅駅で乗車.上成木行きには梅76乙もあり、こちらは、 JR青梅線の河辺駅北口にある乗り場から発車するので注意.いずれも終点の上成木(高水山登山口)で下車する.
帰路:さわらびの湯バス停より飯能駅行バスに乗車. 運行は国際興業.JR八高線の乗り換えは東飯能駅で下車する. さわらびの湯停留所
そのほか:奥茶屋から登る場合は、JR青梅線川井駅前より西東京バス上日向(便によっては清東橋)行きに乗り終点で下車。
maps
1/25000地形図:原市場
登山用地図:山と高原地図 23 奥多摩 2009年
      ヤマケイ登山地図帳7 川苔・御岳・高尾
オンライン地図:YAHOO 地図
guide books
埼玉の山を歩く 石井光造 著 さきたま出版会 1994年
今回私の登った上成木のルートは載っていないが、白谷沢のコースについては紹介がある.
463501357X 奥多摩奥秩父

ヤマケイ アルペンガイド4

東京の山

奥多摩・奥武蔵

links
Link飯能市
Link名栗観光協会
Linkさわらびの湯
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