川苔山の北には、日向沢ノ峰(ヒナタサワのウラと読む)という名の標高1356メートルの ピークがある。雲取山から派生する県境尾根上の1ピークであるこの山の知名度は低く、知っていてもあえてそこを目的に登ら れることは稀な山といえるだろう。
ちょうど東西に走る県境尾根から川苔山の方角に向かう尾根が分岐している場所にあり、県境尾根上にある蕎麦粒山の から防火帯を下ってきた下山者が、山頂を示す道標を発見し地図でその場所を確認する程度で、静かなピークだ。
川苔山の北には、日向沢ノ峰(ヒナタサワのウラと読む)という名の標高1356メートルの ピークがある。雲取山から派生する県境尾根上の1ピークであるこの山の知名度は低く、知っていてもあえてそこを目的に登ら れることは稀な山といえるだろう。
ちょうど東西に走る県境尾根から川苔山の方角に向かう尾根が分岐している場所にあり、県境尾根上にある蕎麦粒山の から防火帯を下ってきた下山者が、山頂を示す道標を発見し地図でその場所を確認する程度で、静かなピークだ。
日向沢ノ峰は、アプローチが良くないことが人を寄せつけない最大の理由であろう。ルートは、蕎麦粒山 から下山時縦走する。川苔山から往復する。このピークから東に続いていて棒ノ折山に達する 県境尾根を東から辿る。そして入間側から登るコースと4つあるが、いずれも面倒が多い。
蕎麦粒山は、通常日原からヨコスズを辿り1杯水避難小屋で県境尾根に出る日帰りとしては 比較的長い時間を要する登山路が用いられ、さらに東に県境尾根を辿り青梅線の通る多摩川筋に出るには長い道程が加わることから健脚 向きだ。そのためか、県境尾根を一杯水避難小屋までもどりヨコスズ尾根を日原に下る往復日程を組む場合が多いようである。
もし、この日向沢ノ峰を第一の目的に登るとなれば、奥多摩側から川苔山山頂部に 登ってそこから往復するコースが一般的であるといえる。ただし、この川苔山以北の部分は片道で1時間ほどかかることになるの で、標高が川苔山より9メートル低いこのピークまでわざわざ足を伸ばさないのも無理はない。川苔山自体さほど容易な山とはいえない から、それを越えた奥にある山という心理的な壁が、人々の足をこの山から遠ざけているのかもしれない。
もっと直接登るルートを探せば、川苔山の登山ルートの一つとして知られている大丹波川沿いのコースが挙げられるだろう。このコース は、前半の林道歩きから歩道に入ると沢沿いに獅子口小屋跡までルートが続いていて勾配が緩い。小屋跡から詰めとなる急斜面を登れば、 稜線にそって設けられた防火帯にある踊平に出ることができ、そこからはやや登りとなる防火帯をつたえば、日向沢ノ峰の南峰だ。
私が初めてこの山に登ろうと思った時には、蕎麦粒山以東の県境尾根を踏んだことがなく、この大丹波川から登り、蕎麦粒山 まで辿ることで空白部分を埋めるつもりであった。日程を立てるため、持っていた少し古い登山地図をひろげてみると、棒ノ折山から 長尾丸山を通る尾根上にもルートがあることを知った。
この地図が発行された時点では、それはその時より10年ほど前であるが、このルートが使われていたことを示していた。しかし、 二万五千分の一地形図に道は記載されていないし、その当時発行された登山地図にもルートとして載っていないので、廃道となってい たようだった。
十年の歳月はどこまでこの歩道を自然に帰させてしまったか少し不安が残っていたが、稜線の有間川側には林道もできているような ので、もしルートに行き詰まってしまったとしてもそちらへ逃げ出すことはできそうだし、棒ノ折山に立ちよってから、このルートに 入ることになるから、もしそこで道が使えないことが判明したとしてもそのまま有間ダムに下ってサワラビの湯に浸かって帰ってくる のも悪くない選択で早々敗退という結果に帰したところで、一日を棒にふったような悔しさは残らない。 ダメもとで、この状況のわからないコースに挑戦してみることにした。
歩いてみれば、踏跡こそ薄かったが、稜線上から外れることのないように進みさえすれば良いことから、難なく日向沢の峰に着き、 このコースが日向沢の峰の登山に使えることが分かった。現在の登山地図(2010年版)ではこのルートも記入されており、少な いながらも尾根上には道標が立ち赤テープがついているので利用は問題ない。まず、棒ノ折に登ることになり、そこから8キロメート ルの距離は決して容易なコースとはいえないが、日向沢の峰の登山ルートとして問題なく使える。
また、健脚者には、蕎麦粒山や川苔山からの下山路としてこのルートを使うことも可能である。尾根上の道ゆえに登り降りが繰り返 されるが、日向沢ノ峰1356m、それに対して棒ノ折山は969mの標高であるから、下山路として使う方が楽である。
棒ノ折山山頂. |
有間川を挟んで林道が見えている. |
尾根上を辿る歩道. |
鉄塔の下から川苔山側を眺望する. |
防火帯を日向沢の峰に登る. |
日向沢の峰南峰 |
日向沢ノ峰北峰 |
初めてこの山に登った2001年の山行では、棒ノ折山から県境尾根上を伝うルートを使っている。ここでは、その時の記録をのせる( その後の山行の経験とあわせて2011年手直ししてある。)ことにする。 また逆にして、大丹波から踊平を経て山頂へ登り、このコースを使って棒ノ折山を経て下山する日程を組むのも良い。
県境尾根に入るためには、まず棒ノ折山に登る必要があるが、その後のコースが長いことから最短でこの山に登れる大丹波側のコース を使うことにした。大丹波川に沿ってバスが運行されていてJR青梅線の川井駅から乗ることができる。川井駅を降り青梅街道に出て 大丹波川を渡るとバス停がある。
バスは上日向行きの場合とさらに奥の清東橋までいくものがある。朝7時代のバスは上日向行きだったので、10分ほどバスると終点で 、ここから奥茶屋まで車道を歩くことになった。10分ほど歩き清東橋を渡ったところからは、川原にキャンプ場があって、その最も奥にあ る奥茶屋キャンプ場に棒ノ折山の登山口がある。橋を渡った対岸に、わさび田の続く沢沿いの道が始まる。
わさび田に挟まれた沢沿いの部分を終えると、植林中の急な木段が続く急坂となり、やや東に進路を変えてさらに登ると視界のよい棒ノ折 山の頂に出る。
この山は、春先はハイキング客いっぱいとなる行楽地だ。まだ今日は時間が早いようで山頂も空いていた。 山頂に立つ道標には、日向沢ノ峰の文字はあるので予定しているルートはどうにか続いているようだった。しかし不安にさせるのは この表記内容が明らかに誤っていたことだ。長尾丸山と日向沢ノ峰が入れ替わっているとしか考えられない。
山頂で朝食を取り、仙岳尾根側に道を進むとさすがに踏み跡は薄くなったが、見失うほどではなかった。仙岳尾根から落合に下る道は 通行止とされていて、日向沢ノ峰方向には何も指示がないだけに、これから先道が続いているのか不安である。植林中は作業道が細いなが らも踏み跡を残していて、945メートルのピークに達した。このピークから下り鞍部に出ると間近まで林道が迫ってきている。
登りとなり長尾丸山に登って急な下りで次の鞍部となり、登り返すとと岩の乗ったピークの脇を進んで、次のピークも巻けるようになっ ている。 このあたりで前半を終えた感じだが、後半は踏跡はいよいよ薄くなり、急坂でピークに登っては少し下ることの繰り返しで、標高を稼いで いくから難儀する。大丹波川側の斜面は結構急に切れ落ちていて、尾根は細くなり、名栗側も切れ込んできて、歩道の幅の尾根となってい る場所もある。
自分の位置を知る手掛かりとなるのは送電線で、大きな鉄塔の元に出ると南西側は切り開かれていて、川苔山方面の展望がある。ここか らはこの送電線の巡視路として使われていることから、黄色い東電の標柱が立っていて歩道にも手が入っている。前方に目指す日向沢ノ峰と 思われるピークが見えている。
右に折れ有間山に続く尾根側にそれていく所で、歩道が分岐しているが、前に続く急斜面の踏跡を登っていけば、防火帯に出た。蕎麦 粒山から続いている防火帯はここで直角に折れる感じで、左上に狭い日向沢ノ峰南峰の頂がある。
南峰は西から南の眺望に優れ、蕎麦粒山、三ツ ドッケ、長沢背稜の山々、雲取山、石尾根の山々も見えている.石尾根の背 後に見えるのは方向からみて三頭山であろうが、幅広でみなれない山容だった. 御前山、大岳山は、 その位置、その形から確認は容易だ.その手前には、川苔山も見えているのであるが、 これも見慣れない姿だった。
この時の帰路は、蕎麦粒山を経てヨコスズ尾根を日原に下っている。防火帯を先ほどの分岐に戻り、蕎麦粒山方面に進路を取る。まもなく 北峰の場所に出るが特徴はなく、この先蕎麦粒山までは防火帯の登りが続くのみである。
帰路: | |
蕎麦粒山にかけては防火帯の道を行く. |
蕎麦粒山の頂. |
石灰岩の岩が転がる蕎麦粒山.川苔山が見えている. |
日向沢ノ峰の左背後に小さく見えているのは、尾根歩きのスタート地点であった棒ノ折山. |
Course Time:
川井駅 10分(バス)上日向バス停 25分(清東橋からなら10分)奥茶屋 70分棒ノ折山山頂 20分 945メートルのピーク 40分長尾丸山の先の鞍部 60分鉄塔のピーク 15分分岐 15分日向沢ノ峰(南峰)山頂 5分 北峰 30分蕎麦粒山 45分 一杯水 5分避難小屋 85分東日原バス停 25分(バス)奥多摩駅 |
日向沢の峰から |
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蕎麦粒山と天目山が北西に見えている.天目山は三ツドッケとも呼ばれている山で、この方角からみた場合こちらの呼び名がいっそうふさわしい. |
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日原川の源に位置する奥多摩の主峰、雲取山はどっかり居座った容姿から見分けやすい山である. | |
石尾根末端部.地図で照合しなかったので自信がないが、三ノ木戸から六ツ石にかけての部分であろう.背後に見えているのは
三頭山であろうか. | |
御前山.奥多摩の山の中では見栄えの良い山として知られている.鞍を挟んですぐ西にあるピークが惣岳山. |
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