天目山頂.狭い山頂の南側は開けていて、展望がある.日原からここまで辿ってきたヨコスズ尾根と、日原川の谷の南には石尾根が横たわっているのが見える. |
ヨコスズ尾根を歩く. | |||||||||||||
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東日原でバスを降り、ヨコシズ尾根に登る植林中の急坂、一刻も早く開放されたいと
一歩一歩が次第に早くなってきて、息は次第に荒くなっていく. 先日、雲取山に登ったとき、稲村岩の上から眺めるこのあたりは、尾根末端の切れ方が 考えていたよりいっそう急であって驚いたことを思い出した.スイッチバックの繰り返しは、その部分を登るものなのだ. 切り返し点が、東側、倉沢谷の方に近づいてくれば、残りはわずかになったことであるから、そろそろ休憩しようか思えてきた.しかしもう一歩だ. 日原からの登ってくるもうひとつの道が合流し、そのすぐ先では西側は切れ落ちている.いよいよ尾根の上に到達したのであって、ここから背に沿って北に進むようになる. 落葉の林が広がる.木々の枝越しに秋の空を見上げた後、時計に目をやるとバス停からは30分が経過していた. ここで軽く一休み、汗もかいたから水を飲むことにした.前回ここを通ったのは、蕎麦粒山に登ったときのことだ. その時は一杯水小屋で一泊したから、背には重い荷物もあってかなりきつかった記憶がある.今日の荷物はまるっきり軽いけど、それでもけっこうきつい登りだった. でも、このコースの良さは、この試練を終えてしまえば一杯水小屋まで続く残りは、勾配のほとんどない尾根上の水平移動であることだ. それに、自然のままの林中の気持ちよい散策を続けることができる. この尾根の稜線は左手の斜面の上に延びていて、歩道はその東側を巻いて進んでいく.東側は薄暗い植林、西側は落葉してしまった広葉林と、歩道を境に対照的な林の中を歩きつづけると、 周りがすべてが自然林に統一された.このあたりで滝入りの峰を巻いているはずだ. 南側にそれて戻ると、倉沢谷側は急斜面となっている.大岳山も見えてきた.両側から谷が浸入して尾根のくびれたところに出ると、左前方長沢背稜の山々が見えている. 稜線上に出たので、風も強く吹きつけ寒くなる.11月に入ったのだから、いよいよ冬も近づいたようで、ビュービューと音を立てて木枯らしは吹き付け、そのたび、舞い上がった落ち葉は、サラサラと降りかかる. 小さなピークを越えて下ると、雲取山が見えていた.今度は稜線のやや西側を歩道を進むようになる.茶色の涸れたミツドッケが顔を出す.あたりに笹が茂るようになって一杯水の避難小屋に着いた. 先ほどまでの風はいつしかやんでいて、小屋の表のテーブルで静かな昼食を楽しむことができた. |
天目山(三つドッケ) | |||||||||||||
とっけは尖ったピークを指すという.長沢背稜には芋の木ドッケという山もあってやはりよく目立つ山だ.
天目山には、三つの遠方からよく目立つピークが並ぶから、こう名づけられている.3つのピークはどんぐりの背比べだが、真ん中のピークに三角点が
設置されている. 一杯水小屋を出る.背稜縦走コースは、これらピークを巻いてつけられている.小屋から稜線を辿って登ることも可能なようだが、私は西側から ピークを目指すことにした.歩道を歩き始めると、あたりは涸れたカラマツの色一色に変わった.右上にあるピーク巻き、やや左に折れると、頂上の 入口があった.目印は、地面に差し込まれた小さな指導標.その指し示す先の笹の間には踏み跡は見つかるが、はいろうかためらうほどかすかな 痕跡しかない.笹をかき分け小さなピークに達し、そこから少しだけ下って、本命の三角点峰の急登が始まった.狭い山頂ではあるが、南側が 開いていて展望はある.ほぼ正面は鷹ノ巣山で、その東側に石尾根が続き、御前山、大岳山が後ろにある.背景としては、丹沢の山々が並び、 山頂は雲に隠れてしまっているが、富士も見えている.雲取り山と天祖山がみえ、その右奥にひときわ高くみえる峰がある.これが長沢背稜 の付根になっている芋の木ドッケであろう.小川谷の紅葉は最盛期は過ぎているようだが、まだ色は残っている感じだ. 先ほど登ってきた道を巻き道まで下りることにして、おりていくと、踏跡は笹の中に消えてしまった. もう巻道はすぐであろうから、見当をつけて南側に降りたら、そこに縦走路は走っていた.本来の分岐より少しだけ手前に出てしまったようだ. 今日の目的地はあとハナト岩だけだ.小川谷の支谷、滝上谷の源頭に突き出した岩で展望の良い場所のようだ. なだらかな高みに達すると、秩父側が見えてくる.その先に、錆びた鉄板にハツギ尾根と書かれた分岐があって、これは、天目山に突き上げ ているカロー谷の右岸の尾根を下っていく道のあるようだが、地形図にはまったく記載されていない. |
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ハナト岩 | |||||||||
細い道がすぐ横のピークに分かれているが左下の巻き道を進む.
このあたりが、地形図にある1550メートルと続くピークのようだ.唐松の中を進むと、ハナト岩への道が分かれていた.左に20メートルほど入ると前は一気に展開した.小川谷全体
が見下ろせる感じだ.
正面には鷹ノ巣山、大岳山と御前山が左手にある.その後方に連なる丹沢の峰々は、1カ月ほど前に、
御前山から見ていたから、それらが遠い分だけスケールダウンしているだけで、山々を特定していく
のは容易だった. 小川谷の右手にはタワ尾根が降下してきている.その後ろに、砕石場の段々のある天祖山を挟んで、雲取山の稜線が見えている.右に目をおくってい くと、どんどん低くなっていくが、ここが大ダワで、その先に確認できるひときわ高いピークが芋ノ木ドッケということになる. 長沢背稜は、この芋ノ木ドッケに始まっている.もし辿ってここまでいくとなるとずいぶん時間がかかりそうに思える.背稜を手前にもどってくると、 さきほどみたタワ尾根のつけ根には滝ノ谷の峰、その後ろに長沢、水松山などがあることになるが、はっきりしない. もっとも手前にある酉谷山も、ここからはまだすいぶん先にある感じだった. 道は少し登りになった.たぶん1591メートルのピークのあたりだと思うが、少し南に出た場所からくだりに転じた.続いていくつかピークの下を越えていく. 秩父側の林道も見えるようになり、背後には大平山の茶色の三角形が再び見えた. 岩のあるピークを巻く部分には木の桟道がついている.犬麦谷のあたりに差し掛かっていることになるから、予定していた今日の稜線歩きは終盤に 達しているようだ.カラマツ林にはヒノキが混ざり、青々とした葉が混ざるようになると、七跳山の分岐にでた。道標のすぐ横から、山頂に向かう踏跡が確認 できるが、寄り道している時間もなさそうだ.背稜縦走路の先は、山腹に小さな小屋が建っている酉谷山に向けてまだまだ続いているのだが、 、もちろん今日はこれ以上先に進む時間はない. |
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ゴンパ尾根を下る. | |||||||||
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軽く休んでから、ゴンパ尾根を下る道に入った.最初は南に進んで、そこから犬麦谷側の斜面を折り返しの連続で一気に高度を下げていく.葉は木々からすっかり落ち
、落葉は私の歩みとともにシャリシャリと音をたてる.続いて、カラマツの落葉の積もったきめ細かな茶色の路面であった.
分岐が現れ右手にも道が続いているようだが、ここは真っ直ぐ進めばよいだろう. スイッチバックが始まり、途中視界が開けたところでは、ヨコスズ尾根が見えている.そして、ヒノキの植林中に入ってしまう. 犬麦谷林道に出ると、カモシカ、リスと続けて野生動物に出迎えられた.長い林道歩きが残っている.小川谷林道に出て、酉谷山の方向を見上げると、 上のほうでは葉は落ちていて、くすんだピンク色の斜面.その下は、まだオレンジ色に塗られていた.山を紅葉が降下してくる途中なのだ. 滝上谷を越え、次のカロー谷の出合いはもう少しとなったあたりで、予想していなかった出来事が待ち受けていた. 崩れて林道が完全に埋まってしまっていた.上には重機もおかれているから復旧工事は始まっているようだ. 大きな石がうず高く積みあがっている.このような場所を巻くのは本当に心地悪いものだが、もどるわけにもいかないから、路肩のあったと思われる場所の 谷側を一足一足踏みしめて進む.ちょっと油断すると、そのたび石は勢いよく谷に向けて転がっていく.落石がないとも限らないから足元だけでなく、上も気がかりだ.周りに 頭ほどもある石が落ちてきたらかなわない. どうにか越えると足元は泥まみれであった.カロー谷の出合まで降りていくと、当然のことながら林道は通行止にして あった.爆音が岩に反響する小川谷大滝のふちをとおりすぎると日原鍾乳洞の前に出る.商店はちょうど閉めているところであった.秋の夜は早い.紅葉盛りの休日、昼間はさぞにぎわっただろうに、バス停に向かう 私の前には、もう人影はなかった. |
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