奥多摩駅の北方に位置し、海抜1363メートルの川苔山は、多摩川の南岸に並ぶ奥多摩三山と並ぶ日帰り登山の手頃な行き先だ。
山頂は眺望も良く、開けた西側からは石尾根から雲取山。やや離れた右手には三ツドッケや天祖山も見える。空気の澄んでいる季 節なら南に富士山の眺望も加わって、より充実する。
いくつかのルートがあり、それらの組み合わせを変えて、そして季節を変えて何度でも登りたくなる山である。
奥多摩駅の北方に位置し、海抜1363メートルの川苔山は、多摩川の南岸に並ぶ奥多摩三山と並ぶ日帰り登山の手頃な行き先だ。
山頂は眺望も良く、開けた西側からは石尾根から雲取山。やや離れた右手には三ツドッケや天祖山も見える。空気の澄んでいる季 節なら南に富士山の眺望も加わって、より充実する。
いくつかのルートがあり、それらの組み合わせを変えて、そして季節を変えて何度でも登りたくなる山である。
バリエーションに富む川苔山の登山コースの中で、もっとも利用者の多いのは南西からアプローチする 川苔谷ルートであろう。川苔山から県境尾根の日向沢の峰に達する尾根の西側、そこから蕎麦粒 山まで南西側の水を集めているこの沢は、その中流域にいくつか滝がかかり探勝地としても人気がある。この沢筋に設けられた 探勝道を伝い、奥多摩でもっとも美しい百尋の滝に立ち寄ってから、山頂に向かうことのできるこのルートは奥多摩を代表する 登山道といえる。
川乗橋のバス停に始まる林道部分と探勝道からなる前半は、ゆるい登りがあるだけで、沢筋だけに晩春初夏の日差しの中でも 快適で、特に新緑の美しい季節におすすめのコースである。
探勝道を終え百尋の滝で水しぶきを浴びながら休憩した後、横ヶ谷に沿ってつけられた登山道を登り、沢沿いに出て最後の急 登を終えれば東の肩に出て山頂はすぐだ。また、このルートには西の足毛岩側から山頂に至る歩道も分かれ、いずれを使っても 要する時間は比較的短い。
青梅線の駅まで、直接下山できることから重宝なのは東南側ルートである。鳩の巣ルートは、 最短路であり、山頂から東ノ肩へ下り、そこから南東に下った先にある舟井戸に出る。ここから植林中に入り、どんどん 高度を落とせば、入川谷にそって南下するようになる。本仁田山の登山道が分かれていく大根ノ山ノ神をすぎると、棚沢へ 下るやや急な歩道となり、棚沢集落の中を急なコンクリート舗装された車道で下れば鳩の巣駅だ。
鳩ノ巣ルートと入川を挟んだ東側には赤杭尾根があり、歩道は尾根を辿っていく部分がやや 長丁場で弛れる感じがするものだが、このルートも直接駅に降ることができ下山路に適する。鳩の巣ルートと同様、まず 山頂から東の肩に降てから、さらに東に進み曲ヶ谷北峰に登る。このピークから赤杭尾根にむかうルートが分岐していて、 南峰へ出ると防火帯の下りに入る。
しばらく尾根の背を進んでいくが、これを終え東側に折れて植林された斜面で高度を落とし車道に出る。この車道を しばらく進んだところで登山道の続きに入り、これをたどっていった先に古里駅と川井駅の分岐がある。通常は古里駅に 下る場合が多いようで、西南の入川側に反れていき、植林中の急な下りとなり、尾根を離れるとまもなく車道に出る。
北面からのルートは、川苔山の北方に位置しているピーク日向沢の峰から続く尾根の背に設け られた防火帯を辿って、曲ヶ谷北峰を経て東の肩に出るもので、この防火帯部分へ、大丹波川に沿ってつけられたルート で登ることになる。
青梅線川井駅の西で多摩川に流れ込む大丹波川、この川筋を清東橋かその手前の上日向までバスが運行されていて、 アプローチに利用できる。バスの終点から林道大丹波線を歩き、獅子口小屋跡へ向かう登山道に入る。
沢床を辿るルートから林中の小屋跡に出る。小屋跡より50メートルほど南には、水が流れ出ている小さな洞、獅子口 がある。ルートは小屋跡の前で2つに別れていて、左手はこの獅子口を経て横ヶ谷平に向かい、もう一方は大丹波川と川苔 沢の分水部にある踊平へ向かうもので、荒地となっている小屋跡を奥まで進み、沢の左手から急な踏み跡を辿っていけば 稜線部の防火帯に出ることができる。
南の本仁田山まで続いている鋸尾根を伝うルートも、下山路として健脚者に利用され ている。鳩の巣ルートの下りが始まる舟井戸に、この鋸尾根稜線への分岐があって、踏み跡を辿り鞍部の大ダワまで進むこ とができる。また、舟井戸から鳩の巣駅側に下ったところには大ダワへの登路が分岐していて、ここから登りなおすことも できる。
大ダワから南は、本仁田山の登山にも使用される整った尾根伝いのコースで、これを登っていけば、コブ岩山を経 て本仁田山の山頂に達することができる。下山は、南へ大休場尾根を進み安寺沢に下り、そこから奥多摩駅まで車道を歩 くことになる。
大根ノ山ノ神から大ダワへは、川苔山の西にある足毛岩の肩に向かう歩道が登ってきているので、本仁田山まで縦走 せず、大ダワから鳩の巣駅に下ってしまうバリエーションもありえるだろう。
日に日に暑さが増す新緑の季節、沢沿いを流れる風に涼を取りながら、鮮やかな緑に包まれた 探勝道を辿るこの登山ルートはその魅力をより増加させ、奥多摩に出かけようとすれば、最初に思いつく 候補になる。
奥多摩駅を出発した日原線のバスは、青梅街道に出ると日原川を超えている氷川大橋を渡って右折 し日原街道に入る。進むバスから、時に沢床へ達した陽光の反射するのが見え、夏の入口に達した川苔 谷の美しさに期待を膨らめ、まもなく到着するバス停を待つ。
集落部分は終え、日原川の谷間にすがりついた車道にはいるとまもなく川乗橋バス停がある。 バス停は川苔沢に沿って付けられている川苔林道の入口にあり、鉄の扉の脇の歩行者用の隙間から林 道に入る。
昭和30年代につけられたこの林道は、ほぼ川苔沢の奥まで延びている。林道ゆえに落石は散らばっ てはいても、まだ新しい舗装された車道は緩やかに高度を上げながら、まずは沢の右岸を進んでいく。 暗い植林中、時に沢に差し込む陽光に照らされた水の流れを脇見しながら歩いていくと、時に視界が よくなり、結構高度を稼ぎ出していることに気づく。
竜王橋で左岸に渡り、すぐ次の細倉橋で右岸にもどったところが探勝道の入口であり、沢に沿って 整備された歩道が始まる。
さっそく、谷幅いっぱいに広がった大きな淵へ向け勢いよく流下する滝を見下ろす狭い歩道となり、 慎重に歩むとその滝のすぐ上で流れを横切り、左岸をへばりつくように進む道となる。
滑らかに削りとられた美しい岩肌、その上を流水が滑り落ちている。この長滝の次には、谷幅一杯 の低い滝が懸かっていて、そのすぐ脇で岩に刻んまれたルートを登ると橋がかかっていて対岸に渡り、 進めばすぐ左岸にもどる。 ほぼ直線に流れ下ってくる沢の流れを見ながらこの橋を渡り、沢の脇についた細い歩道を緩やかな勾 配で登っていき、次に対岸に渡ってからしばらくは沢床を離れて進むようになる。
再び沢床に降り流出した橋の跡を見ながら渡渉する場所は、百尋の滝のすぐ下流であり、対岸の急 な登りを登れば百尋の滝の入口に出た。前方には緑の中、水が一気に舞い落ちる百尋の滝の姿があり、 木段を下り滝の直下までいける。
高さ30メートルほどで決して高い方ではないが、奥多摩にある滝のなかでは規模において大きな 方に入るし、その整った容姿によって美しさでも上位にあることは確かだ。
すぐ前の川原で、風向きによってはふりそそいでくる水しぶきを浴びながら休憩することにした。 左手後方を見上げれば上には、岩に張りつくように設けられた林道の、その直下かから沢床まで一気に 切れ落ちた岩体がそそり立っている。
初めて、この滝に私が訪れたころ、この下にもひとつ滝があって、それをのぞき込むことができたのだが、 その後起こった大崩落とともに、こちらの滝は失われてしまった。
休息を終え、滝の入口までもどって山頂に向け歩道を進むことになる。しばらくは急な登りが続き、 コース中もっともしんどい部分だ。植林中のやや平坦な部分に入ると下りになって沢をわたっている。 沢に沿って南に進むその先に、足毛岩の肩へ向かう歩道の分岐がある。
山頂稜線部の西にそそり立つ のが足毛岩で、この付け根を超えて川苔山と本二田山を結ぶ稜線にある大ダワまで登り、それを超え て鳩ノ巣まで続くルートがあり、ここがその分岐である。
足毛岩の元からは、稜線を伝って川苔山の山頂へ登るルートがあり、こちらを使っても分岐をその まま進んで横ヶ谷に沿って登っていき東の肩から山頂へ至るルートとほぼ同じ時間で山頂に着くことが できるので、どちらを選ぶか迷うところだが、今日は使用頻度の低い足毛岩のコースから登ることにし た。
足毛岩に向かい右手に折れていくと、カラマツ林になりまもなく足毛岩の肩に出た。分岐となって いて右手には足毛岩があり、まっすぐは大ダワ、左が山頂だ。まず、岩の絶頂を期待し足毛岩に向けて たどってみたが、林の中でそれ以上先はよくわからない。肩に戻り山頂に向かう急な登りに入る。
まもなく山頂が左手に見えてきて、防火帯に出る。山頂まで急坂の続きで、最後でもありややしんど いところだが、防火帯の踏み跡を一歩一歩たどれば山頂にでた。
百尋の滝への探勝道は滝の直前に河床を渡っているが、そのすぐ下流で東側から流れ込んでいるのが横ヶ谷で、 この谷に沿ってつけられた歩道を辿るのがこのルートである。もともと、川苔山は横ヶ谷の峰として、山頂の北側 を東の肩にむけ突き上げていくこの谷の源頭に位置するピークである。
百尋の滝を出発すると、急な登りで、この沢の北側の斜面を登っていくようになり、沢はどんどん下に行ってし まうが、歩道も緩やかになるとやや下って支谷火打谷を超える。ここで、派生していくのが足毛岩ルートであり、 横ヶ谷を横断して大ダワ超えの歩道に向けて谷筋を西に戻っていく。
この分岐で、左手に登り直しになる方が横ヶ谷を遡り東の肩に出るルートで、バリエーション豊かな川苔山登山ル ート中でも、だれもが一度は登っているであろう川苔山の表玄関だ。
植林中を登っていくと、石積み堰堤のある沢沿いに出る。いつの時代に作られたのか、こんな源頭部に堰堤が作られ たいきさつは知らないが、人の治水への取り組みに驚かされる。いくつかの堰堤が続く沢を伝っていくと、やがて沢を離 れて、左手の尾根に取り付く。
尾根の背を登っていくようになり、この植林の登りはややきつく感じられるが、それを終え東の肩に出れば、そこから 右手の山頂はすぐである。
鳩の巣ルートは大部分が植林中の仕事道であり、私にとってそれは下山路としての価値しかない。 なにしろ直接駅に出れるから、このルートを下る予定にすれば、山頂ではバスの時刻を気にすること なく、気の向くまま過ごせることになる。
歩道の状態も年間を通して安定しているし、山頂から東の肩に出て、舟井戸に下りさえすれば、 そこから先は、ほぼ一本道であってただただ下っていくだけなので、迷う心配をすることもなく 棚沢集落に達することができ、下山道として利用を進める人も多いはずだ。
そんなルートだから、私があえてこちらから登るとなるとそれは冬のことだ。新雪直後であったり 凍結のある谷筋を一人で登っていくのは心細いし、そうそうに切り上げたい冬期の登山では、バスに乗 っている時間もなくしたいし、その時刻に合わせて家を出るのもうっとしくなり、こちらのルートが出 番となる。
ぐんと減るとはいえ、冬であっても休日奥多摩の山々に登る登山者はいるもので、朝青梅線に乗ると その姿がいくらかある。だいたいは御嶽駅でおりていき、特に積雪のありそうな日には、それを目当て にしてか結構まとまって降りていく感じだ。次に降りていくのが鳩の巣駅で、人数はほんのわずかで はあるが、川苔山へ向かうのだろう。
せっかく駅からスタートするのだから早い時間帯が良い。日の出前にスタートし、昼くらいには 降りてしまう日程で、早朝がらがらの鳩の巣駅に降り立つ。氷つくような寒さの中、身支度し歩き だした。勝手知ったルートだから地図もいらない。踏切りを渡って、まだ活動をはじめていない集落の 中の舗装された車道を登っていく。
ここの車道は、いつも下った後の疲れた足にきつく感じるが、登りだとその急勾配がより実感され る。当然、集落の家々が先にあって、そこに後になってできたのが車道であるからだろうか。斜面の最 短距離を登る急勾配の車道でコンクリートには溝が切られている。
突き当たりにあるお寺の脇から左手に向けて歩道が始まり、まもなく神社から登ってくる歩道が合わ さり、西川の谷側に出て前方に山々が見えてくる。やや急な登りで植林中を登ると、大根山の神に着いた。
大根山の神には、西川から林道が登ってきている。大ダワ、そしてその途中から本仁田山へ登る杉の殿 尾根のコースが分かれていく歩道の入口が車道の向かいにある。右の入川側から川苔山に向かう歩道は、 最近、車道が延伸され一端車道を歩いてから入るようになった。
入川は、川苔山から曲ヶ谷の峰に続く稜線南面を源にする沢で、東を赤杭奈尾根に西を鋸尾根で区切られ た流域をもつ。鋸尾根側の支谷の源流部には舟井戸という名をもつ場所があり、ここへ向かう歩道は入川西斜 面の植林中でやや高いところを進んでいく。
特に特徴のない緩い勾配の道筋が続きあきてきたころ、やや自然林の残るところに出て、沢を巻くよ うに左に折れていく。この部分には石垣がつまれていて、細い歩道がその上に設けられている。
その先も植林中の道で、時に激しい水音が聞こえてくる場所だ。葉がおちいくらか視界の良くなった冬には、 谷筋の奥を凝視すると、滝のような白い直線が見えていて、これは入川にあるという早滝か銚子滝のものであ るようだ。
左手の木々の中に大きな岩が立っている場所に出て支沢を超えると、ここから歩道は右手に折れていき、 いくらか登りが急になってくる。折り返すように西北に向かうと、植林中の斜面を登り高度をかせぐ部分に 入り、大ダワの分岐が現れる。
木段も設けられていたりする登りがその先も続き、稜線と並行して進むよう になると、まもなく鋸尾根の道と合わさり舟井度に出る。
舟井戸は、尾根の背が広くなっていて、東側の入川源頭部はくぼみになっている。西側には、川苔沢の支谷 である逆川の谷筋が登ってきていて、ここから山頂直下にある東の肩までこの沢は突き上げている。
曲ヶ谷の峰 に向け稜線づたいには急な防火帯が切られていて、その左に沢筋の東の肩に登るやや急な歩道が始まる。すぐ現れ る水場の分岐をすぎ、左に折れるように登っていくと東の肩に出た。
東の肩は、百尋の滝を経て登ってくる川苔谷の登山道の横ヶ谷を辿るルートが合流していて、山頂の登山者の 声も聞こえるようになりいつもなら急ににぎやかになる場所だが、今日は人気がない。ここから東に登ってい くと曲ヶ谷の峰があり、先ほどの防火帯を経て登るルートからこちらに出ることもできる。
以前、ここには緑トタンの廃屋があって私にとって、それは川苔山を記憶に残すランドマークだったのであるが、 今は完全に崩れさっていて残骸が残っているだけであった。
山頂に向かう切り開かれた斜面、さすがに積雪から何日がたっているので踏跡はあった。三角点の設置された 川苔山の山頂は雪に覆われ静まりかえっていた。眺望できるあたりの山々は、葉を落とした木々の作る模様と雪の コントラストのモノトーンな世界であり、山頂の静かさをよりいっそう印象付けるものであった。
大丹波川は、川苔山の北に源を有し、日向沢の峰から棒の折山に続く県境尾根に沿って 東流した後、向きを南に変えて赤杭尾根東側を流れて川井駅のすぐ西で多摩川に合流す る。
この大丹波川をさかのぼった先、西側の川苔沢と分水する尾根の上には、日向沢の峰 南側の鞍部である踊平があり、この直下に掘られたトンネルは、それぞれの沢沿いを詰め てきた林道大丹波線と川乗線をつなげている。
踊平東側斜面には、かつて獅子口小屋が建っていて、県境尾根や川苔山の登山で使用さ れていたようであるが、現在は林中に石積みされた一角がその跡地を示すのみである。この 小屋の名になっている獅子口は、小屋跡から50メートルほど南にある小さな洞のことで 水を湧き出している。
林道大丹波線を歩き、途中から大丹波川河床部につけられた歩道を辿って、獅子口小屋跡 に達し、踊平か南にある横ヶ谷平のいずれかに出て防火帯を南西にある川苔山へ向かうのが、 大丹波川登山コースである。
コース前半は林道大丹波線の車道歩きとなり、比較的展望はあるが単調だ。歩道に入ると 小屋跡まで、沢床部分を中心とするコースであり、川苔谷のように目立つ滝こそないもの の水量もそこそこあって、新緑の季節、瀬音を耳に探勝しながらの登りは快適だ。木橋で何回も流れを 超えながら進むことになり、雨後や冬期積雪のある時の利用には向かない。
バスは、上日向か清東橋まで運行されている。朝の便は上日向行きであり、集落部に終点と なるバス停がある。歩き始めるとまもなく左手に真奈井橋があり、そのまままっすぐ進む。 瀬音を聴きながらの車道歩きを楽しむと、清東橋のバス停に出てそのすぐ先に清東橋があり右 岸に渡る。
ここからは、河床を利用したキャンプ場が続き、棒の折山へルートを分ける。上水道の沈渣 地のある 橋で北岸に渡る。ここからはずっと大丹波川の北岸を進むことになり、次第に高度を 上げていき、東には高水三山の岩茸石山から惣岳山へかけての稜線を眺望することができる。
ヘリポートを巻くように林道が登り舗装は終わって、その先に歩道への入口が現れる。沢床 への急な下りとなっていて、送電線の巡視道が別れた先で、木橋で南岸に渡る。岸が岩場などで 急な部分は対岸に逃げるようになっているので、ここから先たびたび流れを渡ることになる。
北岸にもどり、堰堤の上にかかった木橋で南岸にもどると、核心部ともいえる曲り谷の合流 地点に出る。曲ヶ谷は川苔山のすぐ東にあるピーク曲ヶ谷の峰から北東に向け流れ下っていて、 この沢筋のルートにルートがあって、赤杭尾根の付け根の部分まで登れた。合流点に立つ道標 では、こちら部分が切り落とされていて、利用は難しいようだ。
ここから木橋と桟道が連続し、ある程度高度もあることから滑りやすい雨後は注意がいる。 曲ヶ谷と本流を渡り北岸に出ると滝の上になり、その先で林道からの降路が合流する。対岸に 渡ると、新しくつけられた桟道が現れ、ここからやや登りとなり、沢床から離れていく。
沢床が近づき、それに降りて北岸へ渡ると支尾根を乗り越え、沢床に下って南岸へ往復した ところにの右上にはトタンの作業小屋が建っている。対岸に渡り、わさび田の脇を進めば、この あたり沢の勾配も急になってきて流れも細い。2つの谷筋の間を登っていくように歩道がついて いて、前方の林の中に小屋跡の石積も見えてくる。
蕎粒山や日向沢の峰など県境尾根へ向けては、日向沢の峰の南にある踊平へ出るほうが早い。 小屋跡を奥まで進んで踏み跡を辿ると、急斜面を登っていき防火帯に出る。南西の川苔山へは、通常 横ヶ谷平に登るルートの方が近くて利用される。小屋跡の前を南に向かっている歩道を進むとまもなく 獅子口に出る。
洞の前を通過し歩道を進むと、折り返すように木段の設けられた急な登り区間に入る。 これを終え、今度は植林中の登りが続くが、やがて南西方向に進む感じになり上に稜線が見え てくる。ほぼこれに並行して進むようになれば、防火帯に出る。
ここが横ヶ谷平で、防火帯を南に向け歩くと、次にあるピークは右手の植林中を巻くようになっ ていて、これを終えて防火帯へ戻ったところに、曲谷の峰を巻き、赤杭尾根のつけ根にある狼住所 (おおかみすんど)に出るルートが分岐している。
この分岐から、右手に登っていく防火帯に取り付くと、右手に反れていき赤杭尾根ルートの別れ ている曲谷北峰に着く。ここから、前に見えている川苔山へは、東の肩に下っての登り直しとなる。
北東向きに大丹波川に向け流れ込んでいる曲谷に沿った歩道は、以前登山地図にもルートとして 掲載されていた。かつては林道の名で呼ばれていたようなので、植林作業などで使われていたのか、 10年ほど前に私がたどったときにも、思いのほかしっかりしたルートであった。 このルートは赤杭尾根のつけ根である狼住所すぐ南に出ることができ、川苔山へ登る大丹波側ルート では最短となるはずだ。
沢沿いのルートゆえに崩落や木橋の修繕管理が難しいからだろうか、合流部に立てられている道標は、 このルート側を表示する部分が切り落とされていて、一般的な利用には不適格であることを示している。
赤杭(あかぐな)尾根は、都県界尾根から日向沢の峰で派生している尾根筋で、川苔山の東にある曲ヶ谷の峰 を経て南東に向けて、青梅線川井駅の西まで延びている。この尾根によって入川と大丹波川水系は分水され、稜線には エビ小屋山、赤杭山(地形図では赤久奈山と記載されている)、ズマド山などのピークを乗せている。
この尾根の入川側は大部分が植林となっていて景観の点でも、長くダラダラと高度を落としていく長丁場のコースである ことからも、そこを歩くことにさほどの魅力が感じられるわけではないが、古里駅や川井駅まで直接下れるコースであること が重宝され、川苔山の下山で使われることの多いコースだ。
また、頂部である曲ヶ谷の峰には、北の横ヶ谷平側から巻道がついていて、これを使うと日向沢ノ峰 や蕎麦粒山からの下山ルートとしても重宝する。
川苔山下山の場合、山頂から鳩の巣コースの分かれている東の肩へ下ったら、前に見えている曲ヶ谷北峰に登りなおせば ピークにある道標から赤杭尾根側に向かう歩道が別れていて、樹林中を進むとすぐ南峰に出ることができる。
南峰は舟井戸から登ってきている防火帯と赤杭奈尾根側の防火帯が逆V字に合わさっているその頂点であり、東側の防火帯の先 にある狼住所(おおかみすんど)という名のある場所へ向けて下っていく。ここに北側からの前述した曲ヶ谷北峰を巻くルートも 合流していて、右手には舟井戸コルに向かう植林中の道が分かれている。
狼住所から防火帯はやや登りぎみになり、次の小さなピークの手前で右手の植林中に入る。このピークから真奈井北稜ルー トが別れているが、残念ながらこちらは登山道として整備されてはいない。再び防火帯に出ると尾根の背を進み、モミの木が 立つエビ小屋山の手前で、ルートは左に折れて植林中を折り返しのある急な下りで高度を落とし、真名井沢 から登ってくる林道上部と思われる未舗装の車道に出る。
しばらくこの車道を歩くと、右手にルートの続きが現れる。入ると植林中の歩道となるが、歩道の東側は時に細木の林に なっていて、新緑の季節にはきれいだ。少し進んだところに伐採によって南側が開けた場所があって、多摩川南岸の御嶽山、 大岳山、御前山を見ることができ、右手には、本仁田山と鋸尾根もある。この尾根筋はなかなか高度を落としていかず、 緩い下り続きで鬱陶しい感じだが、まもなく赤杭山のピークへ向かう踏み跡が分かれ、このピークをすぎたところでやや下りと なる。
もうそろそろ終盤、尾根末端の急坂にはいるかと期待したいところであるが、ここから先もしばらく単調な歩道が続き、 次に809mのピークを東から巻いていく。このピークは峰戸山の名があるらしい。ピーク東側斜面は自然林になっていて、 左手に続いている尾根には踏み跡がみられる。
そのすぐ先で植林に入ると下りになって、しばらく進むと古里駅への分岐に出る。赤杭尾根コースの利用者の大半は ここから古里駅側に下っているようだ。右折すると、ズマド山を巻いて西南にそれていき、その先はルートを外したので はないかと心配させるような細い路肩になっている。谷側が急斜面になっていて歩道は崩落を繰り返している。
ズマド山から西南に伸びている尾根が降りてきて、その背に歩道は乗ると、すぐ先で植林斜面を下る折り返しとなって 高度を落としていく。
再び、尾根の上を歩くようになると、左手に折れる場所があって、尾根の背を離れる。下っていくと沢が脇を流れるよ うになり、やがて民家が前に見えてくる。コンクリートの階段で車道に降りると、車道の向かいに駅への近道が続いていて、 ところどころに設置された表示にしたがって下っていけば、青梅線を跨ぐ橋に出る。ここを東に曲り、青梅線に沿って歩い ていくと古里駅に出る。
古里駅への分岐を右折せず直進した場合、すぐ先には赤杭尾根末端部に突き出た双耳峰としてよく目立つズマド山があり、さらに尾根 を南に追って川井駅に出ることができる。
分岐の先で、ズマド山ピークへの踏み跡が分かれていて、こちらに入ると登りとなって北峰に 出る。さらに南側に続く急坂を下り登り返すと低い方のピーク南峰に到達し、三等三角点がこちらに設置されている。
遠望したときには特徴的なズマド山であるが、山頂は展望もなく、これといった面白みのないピークで巻いていく人が多いだろう。 南峰から巻道にもどる部分は、急勾配の植林斜面に残るかすかな踏み跡を辿るようなルートになり注意を要する。西側は谷筋になってい るので、やや東に向かうようにルートを探っていくと、すべるように高度を落としていき巻道に出ることができる。
尾根の末端部は、古里駅と川井駅の間で青梅線がこれを避けるために南に膨れている部分で、駅からみるとまだ十分高いこの尾根の 背を歩いていくことになる。川井コースはほとんど歩かれていないようで、倒木も多く道の状態がよくない部分も多い。青梅線や行き かう車の音が前方より聞こえてきて、末端部に達したかと感じられ、踏跡は左手に折れていくと、下に貯水タンクが見えてくる。ここか ら急な下りとなり、見えていたタンクの脇を通り、その下にある浄水施設の脇で左折すると民家跡に出ることができる。
民家の入口であったと思われるコンクリート段の設けられた歩道を降りていくと、動物よけの網が張りめぐらされていて 、扉を開けて出るようになっている。すぐ下には川井中学に向かう車道があり、左に向けて進むと、斜張橋の奥多摩橋など川井駅あたり の眺めを楽しみながら下っていける。
竹ノ花バス停に出るので、ここから南に向かえば、青梅線の下をくぐり青梅街道に出る。 大丹波川を大正橋で渡った東側に川井駅入口がある。
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