尾瀬は、群馬、福島、新潟の県境に位置し、日光国立公園の特別保護地区に指定されています. 訪問の容易なこともあって、毎年数十万の訪問者があるとのことです.
かつては、その地形の持つ貯水力が注目され水力発電事業が計画されたり、また群馬と福島の県境部を越える 道路の開削も計画されたこともあって、時代の要請による危機に遭遇しながらも、幸いにも尾瀬を愛する人々の 志に支えられその危機を乗り越えてきた経緯があります.
開発を逃れある意味運良く美しい景観を残し、だれもが堪能できる尾瀬ですが、その魅力ゆえ長年オーバーユース の問題が解消されず、自然保護のあり方を考えさせられる地ともなっています.
この尾瀬、訪問の対象としては尾瀬沼と尾瀬ヶ原の2つに分けることができます.
尾瀬沼は、只見川の源流のひとつであり、燧ヶ岳を背とする湖で、湖岸を一周する歩道が整備されています. 一部には湿原も発達し、秋には一面の草紅葉となり、あたりの樹林の紅葉とあわせて特に美しさを増します. ただ湖であることから、どちらかというと夏の訪問地といえます.
ここへの入山は、福島側の沼山峠が最も近いことから 一般的に利用されます.群馬側から入るなら大清水を基点とした三平峠を越えて南岸三平平に出るルートがあります. 東岸の長蔵小屋とすぐ隣の尾瀬沼ヒュッテが散策の拠点といえ、沼岸より2つのルートが整備されている燧ヶ岳の登山ベース ともなっていてベストシーズンには混みあいます.
会津高原駅よりバスが運行されている沼山峠から下ると、まず大江湿原に入ります.尾瀬ヶ原に比べて200mほど海抜が 高いことからやや早く草紅葉に変わります.この湿原の中を流れている大江川が沼に注いでいる場所が、長蔵小屋の建つ沼東岸 で、南北両岸を辿る道が分かれています.南岸のルートは、三平平を経て沼西岸の沼尻に向かいます.対岸の燧ヶ岳の姿を眺め るほか特に面白みがないことから、周回しないかぎりは北岸の道を選ぶことになります.
北岸の道は、大江湿原を横断し樹林に 入ると、もっとも一般的に利用される燧ヶ岳登山ルートである長英新道が分岐し、浅湖湿原という小さな湿原を横切っていきます. この湿原の奥には燧ヶ岳の姿を見ることができます.
再び樹林の中に入り、沼に突き出た半島を越えると、沼岸の道となって沼尻 に向かいます.沼尻には休息所が設けられていて、南岸の道も合わさります.北には燧ヶ岳の登山道になっているナデッ窪があり、 その登山道も分岐していきます.
尾瀬沼と尾瀬ヶ原を結ぶ林道は、ほぼ沼尻川に沿って山間を進みます.沼尻を出てしばらくはほとんど平坦な道が続き、白砂田 代という小さな湿原を横切ると、やや登りとなり難なく峠に達します.ここからは美しい樹林の中の長い下りが続き、それを終える と燧ヶ岳の登山道を交えて、じきに見晴の小屋の前に出ます.
尾瀬ヶ原は広大な高層湿原を中心とした貴重な自然生態系を残す地域です.湿原に形成された微地形、点在する池塘などが作り出す 風景は他に比べるべきものがない魅力があり、特に原一面がオレンジ色に染まる草紅葉の季節には、多くの観光客を集めます.
アプローチは群馬側からが中心となり、最短で原に達する鳩待峠を入口とすることが一般的です.他に富士見峠を越えるルートも あって、かつてはこちらがよく使われていたようですが、現在ではマイナーな入口といえ利用者はほとんどありません.
原の東端、見晴地区は弥四郎小屋 桧枝岐小屋、第二長蔵小屋、原の小屋、燧小屋と5件の山小屋が建ち並び、その収容力と富士見 峠から下った先であることからも、尾瀬ケ原散策の中心地としてにぎわったようですが、鳩待峠からの日帰り入山者が圧倒的に多いこ とから、その通過点となる西端の山ノ鼻が現在では最大の拠点となっています.
こちらには、至仏山荘、尾瀬ロッジ、山ノ鼻小屋の3軒があります.宿泊施設としては、ほかに原の中ほどで湿原を南北に横切って いる沼尻川の拠水林中に竜宮小屋が、北部に東電小屋、尾瀬の水を集めた只見川が尾瀬から吐き出される赤田代には温泉小屋と元湯山 荘の二軒の小屋があります.
鳩待峠でバスの到着する駐車場から歩道に入るとまもなく木道が現れます。下りが続き、 川上川の川底に向かって高度を下げていくと、平坦な木道となってビジターセンターのある山ノ鼻へ向かいます。 至仏山荘の前は休息所となっていて、キャンプ地のなかに水場があります。
左には研究見本園があり、周回して戻ってこれるようになっています。至仏山へ登る歩道もこの見本園のなかで分岐します。尾瀬ヶ 原を探勝するには右に折れて、尾瀬ロッジの前で左折するとここに入山者数のカウンターが設置されていて、湿原の木道歩きが始まり ます.
まずは上田代と呼ばれている部分を歩くことになり、川上川を木橋で越えると木道脇には池塘も現れ、原の散策における核心部に入 ります.湿原上のルートはすべて木道が整備されていて、それらはすれ違いのできるように2列になっていますが、山ノ鼻からの日帰 り訪問者の多いこの先の牛首あたりまで、ベストシーズンは相当込み合います.このあたりは、木道脇に池塘も多くありゆっくり観賞 したい場所ですが、人の少ない時間帯を選ばないと歩かされるだけで終えてしまいかねません.
牛首は、南側から尾根がせり出している場所で、その先で北へ向かい東電小屋を経るルートが分岐していきます.直進すると、だい ぶ静かになった木道を歩きながら広々とした原を満喫でき、しばらく進むと前方に竜宮小屋が見えてきます.
下ノ大堀川の脇はミズバショウが群生し、それらの開花時期は、至仏山を背景とした風景写真としてよく紹介されている場所です. 一方で川が突然消え、他方で湧出口から現れる竜宮といわれる場所があり、ルート左右にそれぞれへ向けて木道がついています.
続いて、富士見平から下ってきてヨッピ橋に向かう道が交差し、ベンチのついた休息テラスのある十字路に出ます.すぐ先に一直 線に並んだ木立の壁が見え、これが沼尻(ヌシリ)川の拠水林です。その手前に竜宮小屋があり、その姿を確認できます.沼尻川は、 尾瀬沼から吐き出され、尾瀬ヶ原に流れ落ちている川筋で、原の南側を西に流れた後北西に折れ原を横切っています.
群馬県はこの沼尻川を県境とし、竜宮小屋の先にある橋を渡れば福島県となって下田代に入ります.下田代は、原のなかで最も 広い地域であるものの、草原上の木道を歩くだけで、散らばる木々くらいしかアクセントがなく、前方に大きな燧ヶ岳の姿が入る ことが光景として特異的です.六兵衛堀を越えると、見晴地区の小屋も見えてきて、いよいよ原の散策は終わります.
尾瀬沼の西北、尾瀬ヶ原の東北に位置する2356メートルの山.
尾瀬ヶ原、尾瀬沼の背景としてなくてはならない存在で、5つのピークからなる火山.現在の尾瀬になるべく地形を作りだした主でもある.
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尾瀬ヶ原の西に位置する海抜2228メートルのピーク.
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