美瑛の丘が美しいのは、景観を構成している線がきわめて人工的なものだからだ. 労力をかけて木々に覆われていた丘を切り開いたのも、そこを耕し単一の植物を敷き詰めて 彩色を決めたのも、そこに暮らす人々の営みだ.
そして、ここを訪れる人々が求めているのも、混沌とした荒々しい自然のままの姿ではなく、都市の建物や道路が見せる幾何学的な美しさである. 入念に手が入れられた広大な庭園、それが美瑛の丘の美の本質である.
パノラマロードは、美瑛川とその支流である美馬牛川にはさまれた一帯に広がる丘で、駅前で レンタサイクルを借り一周するのにちょうどよいかもしれない.一旦、丘の上に登ってしまえば、展望 はよく、道は平坦で、夏でもさわやかな風に吹かれた楽しいサイクリングコースといえるが、谷筋へ 降りて登りなおすところもあるから、その広さとあわせて、半日以上を費やす覚悟で計画すべきだ.
美瑛駅前の交差点、市街地は美瑛川にかかる赤い四季の橋まで続く.パノラマロード北端、車 道は丘へ登り、美馬牛方面に抜けている.JR富良野線を跨いで新栄の丘に向かうルートが分かれ、 さらに南に進むと左手に畑地も現れはじめ、左に分かれていく道は三愛の丘へ登っていく.
福富方面に向かう道の分岐を超え、一旦丘に登ると、道路脇からも十勝岳方面の眺望が得られ る.次の交差点で右に入ると、富良野線の踏み切りを超え新栄の丘へいくことができる. またここを左折すれば拓真館、いずれもツアーでは必ず立ち寄る美瑛の代表的な観光スポットであり、 その中継点だけに、交差点では大型バスをよく見かける.まっすぐ進むと、美馬牛市街へ登っていく.
駅前から四季の塔の建つある美瑛町役場の前まで進み、右に折れると、こちらの道はみどり橋 で美瑛川を渡り丘に登っていく.民家のあるところを過ぎると丘の上を進むようになる.
こちらの道を進むと、まず右に三愛の丘展望公園が現れる.公園といっても道路脇に駐車場が設置され 白いトイレの建物が建つだけの場所だが、晴れていれば道路越しに十勝連峰や大雪山の旭岳の眺めがすば らしい.西側は畑地が広がり、新栄の丘のあたりも見えているが、場所を特定するのは難しいかもしれない. 初夏、私が立ち寄ったときには、ちょうどジャガイモの花の時期だった.駐車場脇の畑は一面、白い花に覆われ ていた.
展望公園を過ぎたそのすぐ先で、別れる農道は、畑地の中を進み福富集落へ下っていく.この道へ入 り、ひとつ先の分岐まで進むと、三愛の丘公園のあたりを見上げることができる.畑の中の交差点、右に曲が ると、四季の橋からきた道へ降りることができる.
展望公園の道路にもどって、さらに南に進むと、白い塔の建つ千代田の丘見晴らし台が左手に見 えてくる.この見晴らし台は脇道から入るようになっている.駐車場から階段を登ると全面が窓となった 展望台だ.左手には水沢方面の低地、右手は丘の上の車道沿いに一列に並んだカラマツの防風林が続いている. 天気がよければ南側に十勝連峰の眺望が開け、右手末端の富良野岳まで峰々の連なりが一望できる.
展望台から降り、砂利道を南に下り右に折れれば、カラマツ並木に沿う車道に戻る. 舗装された車道を少し進んだ分岐を、右に下り美瑛の丘の写真で著名な故前田真三氏の写真が 展示されている拓真館に向かう.このあたりの道路わきは、牧草地になっていて、観光案内の写真でよく使 われている、牧草を刈り取って巻いたロールがおかれていた.
千代田の丘から拓真館に向けて進むと、四季の橋からくる道路の通るくぼ地に少しだけ下り、再び登り直す. 下りに入ると拓真館前で、右手に駐車場と四季の交流館という名の白い建物が建っている. 1階はみやげ物屋が入っていて、休憩するのにちょうど良い場所だ.建物の真中の通路には、裏手の丘に 登る道がついていて、観光用に開放されている.ここからは、前にある丘越しに見える十勝連峰をはじめ、連なる周 囲の丘を眺めることができるので、みやげ物屋で冷たいものでも買って、眺望を楽しみながら休むのも良いだろう.
交流館の南向かい、木立の中に拓真館が建っている.前には観光バスも止まる駐車場があって、観光シーズンには、車 の出入りで騒がしい.建物にはいると、大伸ばしのプリントが展示されていて、写真集で見て知っているものであっても、その大 きなプリントが放つ色彩に圧倒される感じだ.
ただ、施設はそれほど広いわけではないので、バスで団体が到着すると館内がこみ合う.次の訪問地が待っているツアー客は さっさと見学しいつしか消えていくのであるが、ここを訪れる観光ツアーの数は多いから、来ては引きの繰り返しで、じっくり鑑賞 する気が削がれてしまう.できればツアーの来ない時間帯を選んでここを訪れるように計画するのが良いだろう.
四季の交流館の前の道は能見川に沿って農家の点在する低地を進み、四季の橋から美馬牛へ向かうルートと交差した後、 富良野線を越えて新栄の丘に向かうことができるので、帰り道として使える. もうしばらく丘の上を進みたいなら、拓真館前 から南に向かう道路に入り、拓真館のすぐ裏手から始まるパノラマロード南端に位置する丘に登るルートを進むほうがよい. しばらく十勝の峰々を背景にした畑地の中を進む.いったん下ってから、すぐ四季彩の丘のある高台に 向け再び登りなおすことになる.
四季彩の丘は、区画ごとにさまざまな彩りの花が植えられた観光客に見せることを目的とした農園、訪問客も多く騒がしい が、展望のよい丘の上にあって立ち寄る価値はある.ここを最後に、谷筋に下り美瑛市街に向けた帰路にはいることになるが、さらに進んで美 馬牛駅方面にも向かうこともできる.
四季の交流館裏手、能見川北側の丘には、この丘の北縁で憩川筋の集落である福富に向けて、道がついている. 交流館の駐車場脇から細い農道が続いているが、車は通行禁止となっている.
交流館を出発し、急勾配の農道を登っていくと、左手は畑で展望が開ける.谷の向かいは四季彩の丘あたりが みえている.道は右手に折れ、くぼんだ丘の斜面が牧草地になっている場所の脇を進む.いったいが見渡せ、千代田 の丘展望台のある稜線上のカラマツが背景となる写真写りの良い場所だ.
しばらく進むと、広い舗装道路に出て緩い勾配で福富の集落へ下っていく.集落からそのまままっすぐ前にある次の丘 農道を登ると、三愛の丘の展望公園先にあった分岐へ戻ることができる.集落の間を流れている憩川沿いの道は、四季の 橋を渡る市街地へのルートであるからこれを戻ってもよい.
市街とは反対に、美馬牛方面に進み、交流館から来る能見川沿いの道路との十字路へ出れば、踏切りを越え 新栄の丘に向かうこともできるし、この十字路を直進すれば四季彩の丘のある美馬牛側の丘に登ることもできる.
美瑛駅を出た富良野線は、美瑛川を渡ると、憩川に沿った低地を進んでいく.この憩川の西側、美馬牛川との間の丘に、新栄の丘展望公園がある.
市街地より富良野線の西側の道を進み、丘への登りきったところが展望公園.ここから西に低く広く連なる丘を眺めることができる.拡張された広い道路には
観光バスが行き交い、北海道ツアー、美瑛を立ち寄るものであれば、そのパンフレットに必ずといえるほどここ写真が載っているものだ.
観光ツアーにとって美瑛というのは何をみせたらよいのかわからない観光地のはずだ.丘の町というけど、丘を体験するなら、歩くなり、自転車なりで
その起伏を体験するしかないだろうし、ひとつ美しい写真を撮ってやろうと思って来たところで、丘の上から見下ろす低地は狭く、
川沿いの低地から見上げる丘は急傾斜すぎて、相当執念深く歩き回って場所を探さなければ、丘を撮った写真なんて何のめりはりのないつまらな
いものになってしまう.
よって、移動を含めておそらく数十分くらいしか美瑛にさけないツアー旅行となれば、トイレ休憩をあわせてどこかに立ち寄ってごまかすしかないはずだ. それを済ませることのできる場所、道も広くトイレも駐車場もそろっている.それに国道にも近いからそのまま次の目的地富良野に向かえる.十勝連峰の 眺望も良いし丘の上に立ち並ぶカラ松も見えるとあれば、記念写真を撮る場所としても最適で、地元としても、観光客を誘致する必要から、ここに施設を 作らざるを得なかったのであろう.
そして、北海道らしい広々した空間と丘を彩る作物、美瑛の思い出となるはずの記念写真を撮って、観光客はここを去っていく.
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ハナビシソウ. | キンケイソウとラベンダー. | ||||||||
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四季彩の丘 HP |
はがき用イメージのfree download |
JR富良野線 | |
石造りのJR美瑛駅と丘を下るJR富良野線の線路. 旭川美瑛間は所要時間30〜40分.1時間に1本程度運行されている. JR美瑛駅 phone:0166-92-1854. |
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