頭を雲の上に出した富士山を、金峰山の頂からみる.
頭を雲の上に出した富士山を、金峰山の頂からみる.
屋根岩. 金峰山の主要ルートは2つ. 瑞牆山の登口でもある増富温泉から金山平、富士見小屋を経て西から山頂に達するか、北の長野県の川上村から 登るかである.今回は北からの登ることにした.川端下でバスを降り廻目平に向かい車道を歩いていく.周囲に広がる野菜畑の背後に屋根岩の岩峰が立っていた.背後にある滑らかなピークは 小川山.
廻目平キャンプ場. 白樺に囲まれた廻目平キャンプ場.標高も高いので思い切って冬用のシュラフを準備してきたのは正解であった. 日が沈むと温度計は0度を指していた.
このルートは林道区間が長い.崩壊とともに車道は終わり、歩道が川沿いに進むようになる.
登山道は砂走沢を渡り、中の沢の枝沢にそって登っていく.登り口は日当たりもよくカラマツの新緑が美しかった.向かいの斜面には岩が立っていた.
枝沢沿いの登りを終えると沢左側暗い林中の道を辿る.尾根の南側に出て少し登ったところで早くも山頂までの中間点についた. 左手には瑞垣山の異様な岩塔郡、その背後のは八ヶ岳が並んでいる.
秩父あたりに散策に出かけようとしたのであろうか、だいぶ前に「奥秩父」という名の登山用地図を私は買い求めている.そのころ、私の知っていた秩父は、荒川の上流、秩父盆地 あたりだけであったから、そこからはるか離れた山梨県の北部にまで広がる山域をそう呼んでいることに驚いた記憶がある.
山梨県に、南アルプスや富士山のあることはずっと前から知っていたが、北側にある山々はまったく考えたこともなかったから甲武信岳にしても金峰山にしても、地図上に未知の山 名がただならんでいるのを追う感じで、それらの山にそれ以上の興味は持ちはしなかった. しかし金峰山の名は、きんぽうさんという音で私の記憶に残リ続けた.だが、一方それは今後行くこともない奥山といった印象があって 、当時の私には一生縁のなさそうな山でもあった.
その後、秩父の中津川を歩いていたとき、そこでたまたま西沢渓谷の話を聞き興味をもったのがきっかけで、この山域のガイドブック を手にいれることになった.そして、その中にあった瑞牆山の岩塔の写真に魅せられ、奥秩父の山へも、いつか登ってみたいと思うように なった.
そしていよいよ、この金峰山に登ってみようと考えるようになったのは、その瑞牆山に登ってすぐとなりにあった五丈岩を乗せた山頂と 下に延々と広がている森林を見たときである.
しかしながら今回、この山に登ったのもまったく予定外のことと言える.私の山行は、事前に予定を立てていないことが多いのであるが、 当初の予定では1泊2日で雁坂峠を越えるつもりでいた.しかし、前日の疲れから早朝から出かける気がなくなり、ゆっくり出発しても間に合う 山を急遽探すことになった.そして思い浮かんだのがこの山で、登ることになったのである.
金峰山は2千メートル代中盤で標高も十分あるし、甲府から見ればかなり奥にあって日帰りの山の印象は薄いが、北の長野側から登れば日帰りも 可能である.したがって、一日目はほぼアプローチのみに費やすことができ、登り口となる廻目平まで着けばよいことになる. 中央線から小海線に乗り継いで、信濃川上駅から出ている村営バスで川端下まで乗る.あとは廻目平まで1時間ほどの車道歩きにあてるだけだ. 現地に向かう1日めは、体調を整えて翌日一気に目的の金峰山に登れば良いことに決まると気も楽になり、準備もせずに寝てしまった.翌朝、荷をまとめ慌ててガイドブックのページをコピーして 出発する.
まずは中央線で小渕沢に向かった.計画を立てずに出かけたから乗り継ぎも順調ではない.久しぶりに小海線に乗ってみると、線路の周囲にアカマツが多いことに気づいた.ちょうどフジが紫色 の花を咲かせていて、それを眺めていてこのことに気づいた.小海線の信濃川上駅で降りるのは天狗山に登ったとき以来だ. 駅前で村営バスを待つ.前の山並の間に男山の岩のピークが覗いている.
村営バスを川端下で降り、入山帳を書いて車道を歩き始めた.民家が切れ林の中の道になると、上の車道に合流した.高原野菜の村だけに、道路西側には畑が続いている. その奥に端整な小川山が横たわり、その手前には屋根岩のごつごつした尾根が突き出ていた.
東股沢に沿って大弛峠に向かう林道が分かれていく.今は工事中のようでこの林道は通行止になっていた.この沢の魚留沢の先に国師ヶ岳があって、この林道から登られているという.大弛峠まで車
で登ってしまうと海抜はもう2400メートル弱、奥秩父の山々の最高峰であっても残り200メートルしかないからちょっと味気ないだろう.
後で知ったのだが、金峰山へもこの稜線伝いに登る人もいるようである.甲武信あたりから縦走してくるのではなく、大弛峠まで車で登ってから朝日岳経由で登るという.甲府側から御堂川に沿って 登っていないだけでも、かなり楽をしている感じがして少し引け目を感じている私には、こんな登り方はとても信じられないことであるが、考えてみれば私だってアプローチに林道を使うことはあるし 、車で入ることもある、まあ程度の差に過ぎないのかもしれない.
ここから、残りは1キロメートルちょっと、廻目平のキャンプ場に着く.家族連れを対象としたような、村営のキャンプ場であるが、白樺の林立するキャンプサイトは高原の 雰囲気を味わえるし、まだ時期も外れていて静かなままだった.
金峰山小屋から山頂はハイマツの中を登る.右手には岩の露出したピークが並んでいる.五丈岩が見えてきて山頂に着く.
西側には、密生した木々を持つ奥秩父の谷の美しさを見下ろせた.まるで砂払沢は、その流れの弧に接する八丁平を乗り越えて瑞垣山南の天鳥川に流れ込むようにみえるが、 実際には右に折れて廻目平に向かっている.滑らかな斜面と、瑞垣山の岩々、赤岳を中心とした八ヶ岳のコントラストが美しい.
木々のない山頂と周りの山々と一段高い標高から展望は予想されるところであったが、実際期待通りすばらしいものであった.南には、甲府盆地に流れ込む御室川の峪の襞、 その先には富士山が頭を出していた.
主稜は滑らかな山頂をみせる鉄山、朝日岳と東に続いている.その奥に南に延びている稜線の尖ったピークが国師岳、その南の滑らかなのが、奥秩父最高峰の北奥千丈岳である. 朝日岳の左背後に並ぶ3つのピークは、三宝山、甲武信岳、木賊山のもの.
瑞牆山に登ったとき、向かいの金峰山は滑らかな山頂にちょこっと岩がのっていたのが印象的だった.この山のシンボル五丈岩.実際は二十メートルほどの高さの重厚な大岩である.
山頂と三角点.金峰山の標高は2598m.
富士見平に向けて下り始める.こちらから五丈岩をみると、唯の立岩といった感じで角張った安定感を感じさせない.左奥のピークが山頂.
岩の陰に金峰山小屋の屋根が見えている.谷の向かいの三角形の峰は小川山.
山頂から100メートルほど高度を下げたところが千代の吹上という岩場で、南アルプスの山並みを展望できる.岩場を覗きこむと、かなり下まで切れ落ちていて怖い.
樹林帯を下っていくと、小川山への道が分岐していくところには、大日岩がある.分岐点より富士見小屋側に少し下り、この岩を見上げる とその巨大さはより実感される.
大日岩を後に下っていくと、大日小屋のキャンプ地を通過する.青屋根の小屋が下に見えている.あたりは、カラマツ林に変わり飯盛山を巻くようについている歩道を歩きつづける と、富士見平小屋前に出た.ここからは瑞牆山からの下山者も合わさって急ににぎやかになる.名前の通り、この小屋の南東の切り開きの先に富士が位置している.ここから瑞牆山荘の建つ金山 峠までは、30分ほどで下れる.
金峰山の写真 クリックすると大きくなります | |||
瑞牆山と八ヶ岳 |
五丈岩 |
コースについて
東京発でこの山に登ろうとするなら、現地までのアプローチに時間を要することから日帰りはまず無理だ.私は1日めは廻目平までとし、ここで一泊して翌日登ることにしたが、金峰山小屋まで登ってしまい早朝山頂に向かうのが普通かもしれない. 廻目平をスタートし登頂、金山峠まで抜けると、早朝出発でやっとたどり着くという感じのやや忙しい行程になる.足に自信がないのであれば、金峰山小屋を利用して2日に分けて歩いた方が無難だと思う.
廻目平から往復することも可能だが、千代の吹上や大日岩を通らないのでは、金峰山の魅力を欠いた山行になってしまう.このコースを反対方向、韮崎側から組むことも可能で 、瑞牆山荘か富士見小屋から山頂まで往復することになる.足に自信がなければ、初日に大日小屋あたりまで進んでおいたほうが無難かもしれない.
他に、南側から御室川筋を金桜神社から登っていくルートもある.私も金峰山に登るならこのルートと考えていたのであるが、アプローチを含めると一日で山頂までいくのは時間的 に無理そうなのであきらめた.このコースがもともとの参道であり金峰山の由緒正しいコースかもしれないが、利用者はわずかなようだ. 生粋の百名山めぐりを(深田久弥はこのルートを登っている)する人ぐらいだろう.
アタック山梨百名山 新版―実践コースガイド 山梨メープルクラブ編 山梨日日新聞社 2010年
山梨県の山 長沢 洋著 山と渓谷社 2010年改定
山梨百名山 山梨日日新聞編集局 編 著 山梨日日新聞社 発行
山梨のハイキングコース 上野巌 著 山梨日日新聞社発行
往路:JR小海線の信濃川上駅.駅前より村営バスが金峰山川の川端下(かわはげ)集落まで運行されている. 廻目キャンプ場はここから1時間の徒歩.川上村村営バスの時刻表
帰路:瑞牆山荘前から韮崎駅運行されている北杜市民バスが利用できる. 山梨交通の運行している増富温泉郷まで歩くとなると2時間ほど必要. 2011年7月調べ
北杜市民バス、みずがき田園線 運行外車山梨峡北交通株式会社
1日め:JR小海線信濃川上駅>> 35分(川上村村営バス)>>川端下 >>60分>> 廻目平キャンプ場(金峰山荘)
2日め:廻目平キャンプ場(金峰山荘) >>60分>> 林道の終点 >>60分>> 中間点 >>50分>> 金峰山小屋 >>20分>> 山頂 >>50分>> 砂払の頭 >>30分>> 大日岩 >>60分>> 大日小屋 >> 25分>> 富士見平小屋 >>40分>> 金山峠(瑞牆山荘) >>40分(徒歩2時間)>>増富温泉>>75分(バス)>>JR中央本線韮崎駅
|
||||||||||||
|
||||||||||||
|