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馬の背からみた斜里岳頂上
斜里岳遠景 (清里より)
斜里岳は、知床半島の付け根、斜里町にそびえる高さ1545メートルの独立峰である. 今回の知床訪問はこの山に登ることによってはじまった.早朝東京を発ち女満別空港に降りる.網走駅に出て、市内をうろついて時間を潰した後、JR釧網線によって斜里に向かう. 知床斜里駅で山に同行する友人と待ち合わせていたからだ.
この駅は駅名についているように、知床半島の観光拠点となる位置にあるのだが、いまどき鉄道で道東を観光していく人は少ないのだろう.駅舎も田舎の駅のままであったし、がらんとした 駅前からは、ごく普通の町が続いていた.
バス乗場も一昔前のバス停といった感じで、私のような旅行者からみれば最果ての地に来ているという感じがかえって感じられてよかった. バス会社だって評判悪いのは困るだろうから、こぎれいに改装しようとするのもやむ終えないとは思うのだが、質素な旅を求める私のような旅行者には、 金のかかりすぎたバスターミナルは愛着を得られないものだ.
一足先に北海道に来ていて、これから旅をともにする友人がバス停にやってきた.今夜は、隣の清里町にあるユースホステル、清里イーハトーヴに泊まる ように手配してくれていた.清里駅に5時に迎えにきてもらうように頼んであるとのことだ.
ここは北海道ローカル線の駅である.運行されている列車は少ない.次の列車を待つより 斜里岳登山口行きのバスがちょうどこのバス停から出ているようなので、こちらを利用して清里駅まで行くことに決めた.
昼間中のバスは高校生の帰宅用になっているようだ.広大な農地の間につけられた道路をバスは走り抜けていった. まっすぐな道が続いているが、私の乗っているバスは街道を一直線に走っていくのではなくて、たびたび90度進行方向を変えていく. これだけ広い場所ではもし主要な道路の脇で下ろされても、点在しているそれぞれの家まで歩くのは大変であろう. 行きつもどりつ、集落を一つずつ廻っていくようである.バス停のたびに一人づつ乗客の学生は降りていった.
少し家並みが続く場所に出たとおもったら、清里の駅前であった.斜里駅よりいっそう田舎の駅と趣である. 駅前の薄汚れた観光案内板を見ている人たちもいた.たぶん私たちと同じ迎いを待っているのだろう.声をかけると、まだ明日の予定は決めていないという. 北海道を旅する目的は人さまざまであるが、旅自体が目的で、目的地は決めていない旅人にもよく出会う.旅の楽しさを最高に味わっているわけで私にはうらやましいかぎりだ. 決して放浪しているというわけではないのだが、宿を渡り歩いて存分に北海道を楽しんでいる.
せっかくの北海道、ゆっくり放浪してから帰りたいのであるが、釧路からの帰りの飛行機を予約してかけつけた私には、それまでにリストアップまでしてある廻るべきところを 見ていかなければならないのでとても忙しい.
迎えのバンが駐車場にはいってきた.駅前の街並みを過ぎると丘に登りはじめまもなくユースに着いた.想像に反して水色の壁のまだま新しい建物であった.食事を終え、 明日の予定を決める.
この宿の提供するアクティビティの中に斜里岳登山がある.1200円で昼食と送り向かい付きだという.朝7時30分に宿を出発すれば、林道の奥まで車で送ってもらえる. バスで行くと、清岳荘までは8km林道を歩いていかなければならないから、今回はこれを活用して登ることにしていた. 歩き始めれば、山頂までは3時間の予定でかなり楽な登山となりそうな感じである.
後に構えている羅臼硫黄山縦走の前哨戦だから、あまり苦労したくないとの思いと、たまには大勢で登るのもいいと思ったからである. 希望者は私達以外にも3人いるので、明日は5人で登ることになった.
宿の車は牧草地の中の直線道路を進み、舗装されていない林道を登って登山口の清岳荘に着いた.時間は8時だった.地図をみれば現在地のちょうど真東に山頂がある. しかし登山道は沢にそって登っていき、一端頂上の南に位置する馬の背という鞍部に達し、北西に尾根を登っていくようにつけられている.ついでに地図を見ていて気づいたのは、 山頂の東側は斜里町で西は今いる清里町であることである.頂上が行政の境界になっているのはよくあることだが、そこから北西に引かれた境界線がまったく直線である. 直進する道路や、農地の境界線、直線が北海道の地図によく出現する.
沢沿いの登山道.
まずは沢にそった平凡な登山道を進むと分岐に出た.ここで尾根をいくルートと沢沿いに登るルートの2つに分かれる.尾根道の方は帰りに使うことにして 沢から行くことにした.高さ1547メートルともし東京近郊にあれば頂上までハイキングコースの整備されていそうな高さの山であるが、北海道だけに、道が整備されていないのはうれしいことだ. この点は、人によっては厳しさに感じるかもしれないのだが、山はそんなものだろう.沢登りのまねごとがおもしろかった. 楽しい時間はすぐにすぎてしまう.いくつも滝が続く沢は登り終えてしまい、先ほど分かれていった尾根道が合流してきた.
沢を登り詰めてから尾根筋に登る部分は急坂となった.ここはさすがに疲れる.休み休み登っていくが、まだ頂上はどこにあるのかわからない.馬の背に着いてはじめて頂上を見つけ ることができた.これで目標が定まったが、ここからもまた急登が続いた.頂上直前は急傾斜で道が細く少し怖くもある.11時5分、予定したとおりの3時間を要して頂上 に着く.少しは山なれした私と友人にはとっては何でもない道のりであったが、こんな登山を初めて経験した同行者にはきつかったことだろう.コーヒーをわかし、ゆっくり休むことにした.
斜里岳は独立峰であるから、山頂の展望は文句なしだ.そして下に広がっている平地はただっ広いのがいかにも北海道の風景であろう.その平原の先には、私達が明日、向かう知床半 島の羅臼岳と思われる山が見えていた.
1997/8/28日
<地形図> 斜里岳(2万5千分の1)
泊まった宿:斜里岳に登るために私は清里町のユースホステル清里イーハトーヴに泊まりました。 畑が広がる平地の中にこの宿はあって、遠景に斜里岳をいれた北海道らしい風景を満喫することができました。 早朝には、気球の係留フライト を体験することもでき、ちょうど日の出時刻にあたった私のフライトでは、朝日に輝く斜里岳をみることができました。
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道新スポーツ編
北海道新聞社 2000年刊.
道東を旅するための情報
.清里イーハトーヴへのリンクもこちらにあります.
また、北海道全般で旅の情報源は
こちら
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