神威岬
神威岬の先の尖塔カムイ岩
神威岬 今年は、夏休みの4日間を北海道旅行に充てることにした。昨年来、気にかかっていた積丹大滝を訪れ、 ついでに積丹岳に登るためである。4日間で北海道を訪れるとなると、東京から半日で着く積丹半島は無難な選択である。 この半島訪問の起点は小樽であり、千歳空港からJRで直行できる。
 早朝、羽田を発ち、もう10時半には、小樽についていた。改札を出ると、まず意外と駅舎が小さいことに気づいた。小樽というと港街、ターミナルともなる 大きな駅を想像していたのであるが、所詮は函館本線にあるひとつの駅に過ぎないのである。
 駅のすぐ前にあるバスターミナルから10時35分発の神威岬行きに乗った。札幌始発のこのバスは、すでにほとんどの席が 埋まっていて、小樽で乗りこむ乗客は少なかった。街中を抜けてもしばらくは広い道路を走っていく。 海沿いに出て、蘭島というところを過ぎると、前方海岸に二等辺三角形の崖が見えてきた。手前は大きな町で、これは余市の先にあるシリパ岬であろう。 バスは余市市街に入りJR余市駅の前に止まった。
 バスが、小樽を出てから走ってきた国道5号線は、この余市で左に折れていき、JR函館本線と平走し長万部に向かっている。余市は積丹半島入口にあ る街で、ここから先に続いているのは、積丹半島を一周している国道229号線だ。駅のすぐ先には、堂々とした趣のあるニッカウィスキーの工場があっ て、これは余市の名を知らしめているひとつである。
 川をわたると前方に緩い山並みが見えてきた。この山並みに向かってバスは登っていく。トンネルを越え道路は海に向けて下っていく。出足平峠を越え ついに半島の海岸線に出たのだ。板壁とペンキで無造作に塗られたトタン屋根の家を見かけるようになった。北の寒村にきたことを実感させるような家並 みに思えた。
 積丹半島はもろい岩質と冬の荒波のためであろうか、侵食されてできた奇岩が並ぶことで知られている。まず、海面にはホヤのような小さな 岩が2つ立っていた。次に見えたのは一本の細い尖塔で地図にあるローソク岩であろう。これは、私がこれまでみたロウソク岩の中でもっとも蝋燭に近い 細さであった。脆い岩の続く一帯であり、海岸ぎりぎりに道路を切り開くのはやむおえなかったのであろうか、覆道が続いている。
 崩落事故のあった豊浜トンネルを越えると豊浜の家並みに入った。次の古平も基本的には漁村であるがやや規模が大きかった。積丹町に入り美国に 近づくと、前方の砂浜は海水浴客で一杯だった。週末に海水浴のために札幌あたりからやって来るのか、砂浜はテントでいっぱいであった。 美国橋バス停で降りた。
 バス停のすぐ手前、高台の上にある小泊キャンプ場がこれから4日間の滞在地となる。管理室で三泊分を支払い、すぐ上にあるテントサイトに登 った。3段に切り開いたサイトの下側はすでに埋まっていて、最上段が空いていた。展望の良い海側に手早くテントを張って、荷物を解き再びバス停に 駆け降りた。次の神威岬行きのバスが来るのは1時間後。食事をしている時間はないから、商店に入り腹の足しになるものを探し、草餅と飲み物を買 ってバス停に着くとまだ時間があった。次の美国バス停まで歩くことにした。すぐに家並みの外れに出てしまった、バス停が見当たらないので 心配になってもどってくると、海側に曲がったところに役場があり、その向かいに積丹町の観光案内所と待ち合い室の設けられた新しい建物があった。

神威岬へ

 冷房のよくきいたバスが到着し、ここで時間を合わせて出発した。美国の外れで、国道は90度折れ曲がり、 尾根に沿って登っていく。林を抜けると山麓の広々とした風景に変わり、道路に沿って農家の家屋が点在している。神威岬行きバスには、婦美から野塚に 向けて国道を直進していく路線と積丹岬の入舸を経由していくものがある。私の乗ったのは、後者で婦美の簡易郵便局の先を右折し積丹岬方面に向かい、 道道913に沿ったルートを入舸、日司と進み、積丹川を渡えて野塚で国道に戻ってくる。
 幌武意の集落をすぎると前方に木々のない小高い丘が見えてきた。自然歩道入口もある。山の向こう側に積丹岬があるのであろう。道路は下っていき 漁港の脇に出る。このあたりは冬には海は荒れるのだろう、道路脇には堤防が築かれている。突き出した岩にくりぬかれた小さなトンネルを越えた。
 積丹大橋という小さな橋を渡った。下を流れているのは積丹川という、積丹岳北面から流れ落ちた水流で、河口であってもまだ 清流のままである。今回の旅の目的のひとつである積丹大滝は、この川の支流にある。
 ずっと先、沖に細い岩の立つ岬が見えているが、あれがこれからいく神威岬であろう。砂浜が現れ、ここの野営場もテントで一杯であった。 再び岩の海岸に変わると、岬をくりぬいた小さなトンネルが続いた。小さな漁村である予別を過ぎると、道路は海岸を離れ左に折れていった。 バスは、岬のもとの駐車場に向かって登っていく急勾配の道路に入った。国道の路面ははるかに下の方に見えていた。
神威岬
岬のつけ根から海を見下ろすと、信じられないくらい美しい色をしている.ここが、北国で日本海であることを忘れるような色相だ.
 まあ、どこの観光地でも同じだが、よく知れ渡った観光名所である神威岬だけに、観光バス用の大きな駐車場、みやげ物屋と食堂が設置されている。 時刻は2時ちょうどだった。バスを降りると、夏の午後の日射しは強く、汗が吹き出してきた。しかし風が吹けば涼しくて気持ちが良いのは盛夏とはいえ 北海道である。砂利道を登っていくと展望台があって、女人禁制の門が建ててある。ここから、岬先端まで細い歩道がつけられているが、上下が激しいか らかここで帰ってしまう人も多いようだった。
 まずは、階段となった急な下りである。下ってしまえば再び登りに変わるが、なぜかここからはコンクリートが敷かれていた。
 登り終えると、いかにも脆弱そうな崖の前で、その裏側に白と黒のタイル貼りの神威岬灯台が建っていた。すぐ先は展望台で、海面に並ぶいくつかの 岩礁、その中のひとつには高い岩塔が立っていて、この尖塔こそカムイ岩である。
 ふり返れば、積丹岳と予別岳なのであろうか、雲のかかった穏やかな容姿の頂が遠望できた。
神威岬 灯台
つけ根から眺めると、岬は押し出された歯磨き粉のようにくねくね曲がっている。そして小さな起伏が稜線と直交する。 この歩道に直角方向の小さな起伏はどのようにして生じたものであろうか。冬に雪が滑った時削られたのか、ちょっと不思議な構造である。 岬の先端には神威岬灯台が建つ.明治22年建設.現在の建物は昭和35年に建て替えられたもの. この地点は、東経140度21分4秒、北緯43度19分51秒であることが案内板に書かれていた.
水無しの立岩 水無しの立岩
念仏トンネルの掘られている断崖と水無しの立岩. 水無しの立岩:断崖の前に立つ細長い岩.
念仏トンネル 岬の付け根ともいえる場所の下にある断崖には、高さ2mほどしかない手掘の念仏トンネルがある。 岬の背につけた現在の歩道ができる前は、この、途中で折れていて見通しが効かない真っ暗なトンネルを越えて海伝 いに神威岬に行くようになっていたとのことである。地形図には、まだその道筋が記載されているが、現在通行止め となっているようだ。大正年間に灯台守が波にさらわれる事故があり、その悲劇を繰り返さないためにこのトンネル が掘られたことが書いてあった。命の危険を侵してまでも通らなければならない場所、厳しい自然と戦いながら過ご した日々の生活が存在していたのは、わずか100年に満たない昔のことである。
神威岬 神威岬
念仏トンネル側からみた神威岬と海上に立つ神威岩. 冬季の神威岬.訪れる人もなく雪に閉ざされている.
蛸 西の河原
岬の南南東の柾泊の沖には、丸い蛸岩が立っている. 半島から西を眺めると、海面にごそごそと突き出した小さな岩峰が並んでいるのが見える. 沼前岬と西の河原であろう.近年このあたりにも道路が通じ、積丹半島は車で一周できるようになっている. バスも運行されていて夏に来たときには岬の停留所に止まっていたが、まったく客のないまま発車していっ た.
窓岩 岬の南南西にある、名前のとおり真ん中に穴の開いた窓岩.右手にみえている島のようなところは、西の河原.
Information
bus 小樽駅前より積丹線が運行されているが、多くは美国行きで神威岬行きは少ない.神威岬まで、所要時間 2時間20分であるが、12月から3月については、神威岬行きは積丹余別行きとなる. また、お昼過ぎに岬に着く、札幌駅前ターミナル発高速しゃこたん号(小樽、余市経由で3時間強で岬に着く)も 利用可能だが、12−3月は美国止りとなるので注意. 北海道中央バス
Link link積丹観光協会 link積丹町 link北海道遺産
積丹半島地図 神威岬 積丹岳 積丹岬 大滝
積丹岳山頂 積丹大滝 札幌
積丹岳 積丹大滝 札幌
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