神威岬の先の尖塔カムイ岩 |
早朝、羽田を発ち、もう10時半には、小樽についていた。改札を出ると、まず意外と駅舎が小さいことに気づいた。小樽というと港街、ターミナルともなる 大きな駅を想像していたのであるが、所詮は函館本線にあるひとつの駅に過ぎないのである。
駅のすぐ前にあるバスターミナルから10時35分発の神威岬行きに乗った。札幌始発のこのバスは、すでにほとんどの席が 埋まっていて、小樽で乗りこむ乗客は少なかった。街中を抜けてもしばらくは広い道路を走っていく。 海沿いに出て、蘭島というところを過ぎると、前方海岸に二等辺三角形の崖が見えてきた。手前は大きな町で、これは余市の先にあるシリパ岬であろう。 バスは余市市街に入りJR余市駅の前に止まった。
バスが、小樽を出てから走ってきた国道5号線は、この余市で左に折れていき、JR函館本線と平走し長万部に向かっている。余市は積丹半島入口にあ る街で、ここから先に続いているのは、積丹半島を一周している国道229号線だ。駅のすぐ先には、堂々とした趣のあるニッカウィスキーの工場があっ て、これは余市の名を知らしめているひとつである。
川をわたると前方に緩い山並みが見えてきた。この山並みに向かってバスは登っていく。トンネルを越え道路は海に向けて下っていく。出足平峠を越え ついに半島の海岸線に出たのだ。板壁とペンキで無造作に塗られたトタン屋根の家を見かけるようになった。北の寒村にきたことを実感させるような家並 みに思えた。
積丹半島はもろい岩質と冬の荒波のためであろうか、侵食されてできた奇岩が並ぶことで知られている。まず、海面にはホヤのような小さな 岩が2つ立っていた。次に見えたのは一本の細い尖塔で地図にあるローソク岩であろう。これは、私がこれまでみたロウソク岩の中でもっとも蝋燭に近い 細さであった。脆い岩の続く一帯であり、海岸ぎりぎりに道路を切り開くのはやむおえなかったのであろうか、覆道が続いている。
崩落事故のあった豊浜トンネルを越えると豊浜の家並みに入った。次の古平も基本的には漁村であるがやや規模が大きかった。積丹町に入り美国に 近づくと、前方の砂浜は海水浴客で一杯だった。週末に海水浴のために札幌あたりからやって来るのか、砂浜はテントでいっぱいであった。 美国橋バス停で降りた。
バス停のすぐ手前、高台の上にある小泊キャンプ場がこれから4日間の滞在地となる。管理室で三泊分を支払い、すぐ上にあるテントサイトに登 った。3段に切り開いたサイトの下側はすでに埋まっていて、最上段が空いていた。展望の良い海側に手早くテントを張って、荷物を解き再びバス停に 駆け降りた。次の神威岬行きのバスが来るのは1時間後。食事をしている時間はないから、商店に入り腹の足しになるものを探し、草餅と飲み物を買 ってバス停に着くとまだ時間があった。次の美国バス停まで歩くことにした。すぐに家並みの外れに出てしまった、バス停が見当たらないので 心配になってもどってくると、海側に曲がったところに役場があり、その向かいに積丹町の観光案内所と待ち合い室の設けられた新しい建物があった。
神威岬へ
幌武意の集落をすぎると前方に木々のない小高い丘が見えてきた。自然歩道入口もある。山の向こう側に積丹岬があるのであろう。道路は下っていき 漁港の脇に出る。このあたりは冬には海は荒れるのだろう、道路脇には堤防が築かれている。突き出した岩にくりぬかれた小さなトンネルを越えた。
積丹大橋という小さな橋を渡った。下を流れているのは積丹川という、積丹岳北面から流れ落ちた水流で、河口であってもまだ 清流のままである。今回の旅の目的のひとつである積丹大滝は、この川の支流にある。
ずっと先、沖に細い岩の立つ岬が見えているが、あれがこれからいく神威岬であろう。砂浜が現れ、ここの野営場もテントで一杯であった。 再び岩の海岸に変わると、岬をくりぬいた小さなトンネルが続いた。小さな漁村である予別を過ぎると、道路は海岸を離れ左に折れていった。 バスは、岬のもとの駐車場に向かって登っていく急勾配の道路に入った。国道の路面ははるかに下の方に見えていた。
岬のつけ根から海を見下ろすと、信じられないくらい美しい色をしている.ここが、北国で日本海であることを忘れるような色相だ. |
まずは、階段となった急な下りである。下ってしまえば再び登りに変わるが、なぜかここからはコンクリートが敷かれていた。
登り終えると、いかにも脆弱そうな崖の前で、その裏側に白と黒のタイル貼りの神威岬灯台が建っていた。すぐ先は展望台で、海面に並ぶいくつかの 岩礁、その中のひとつには高い岩塔が立っていて、この尖塔こそカムイ岩である。
ふり返れば、積丹岳と予別岳なのであろうか、雲のかかった穏やかな容姿の頂が遠望できた。